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アゴの骨、削るだけで小さくなる? PART1~アゴの骨を小さくする手術

名古屋院 李 院長 プロフィールはこちら

アゴの骨を小さくする手術

アゴの骨を小さくする手術には、削る手術と切る手術があります。

切る手術をするときは、切って骨をずらした後に生ずる段差をなだらかにするために削る作業を行うため、切ると削るの両方を行うことになります。切った骨を再度つなげなければいけないため、チタンプレートやワイヤーで固定する必要があります。

その点、削る手術では骨の表面を機械を用いて削って小さくするだけなので作業は簡単です。でも、この削るだけの手術にはいくつかの欠点と限界があります。

一つは、削る部分の骨を全体的に露出させる必要があるということです。特に短くしたい時などは、どうしてもオトガイの下端の骨につながっているオトガイ筋などの軟部組織を一旦剥がさなくてはいけません。ここを剥がすとアゴ下が緩んでたるんでしまいます。つまり二重アゴになってしまいます。

もう一つは、小さくできる程度の問題です。削る手術で頑張りすぎると、骨の髄質(骨髄)が露出してしまいます。これ自体は大きな問題ではないのですが(エラの手術の時には必ず露出します)、アゴの場合この髄質に、さきほどお話ししたアゴ下の筋肉などが癒着すると、口の動きによってはひきつれて見えたりつっぱたりします。これを防ぐためにはどうしても骨皮質(骨の表面の硬い部分)の全部が無くならない程度に削る量を抑えなければなりません。でも、この骨皮質の厚みは5ミリ程度しかありません。(さらに薄い場所もあります。)ですから、この手術を安全に行おうとすると、アゴの前方や側方を3,4ミリ程度小さくするだけということになります。

アゴの骨を小さくする手術

つまり削る手術は、ちょっと小さくしたりアゴのバランスを少し整えたりするのには良い適応ですが、大きく変化させたい方には向いていません。

切る手術はいわゆる中抜きと呼ばれるものですが、一般的なのは平行なラインで二か所水平に切り、間をだるま落としの要領で抜いて、その上下をつなぎなおすという方法です。

アゴの骨を小さくする手術

当然この上下の骨の大きさには差があるので、それによって出来る段差をなだらかにする必要があります。

これが意外と厄介ですが、ここをきっちりしないと綺麗なアゴにはなりません。

アゴの骨を小さくする手術

上下には長いけれども前後には短いタイプの方は、この下の骨を前方に少しずらして固定します。

この方がメリハリの利いたシャープなアゴに見えます。

この中抜き手術は切る角度を変えたり、上下の骨切りラインを変えることで、いろいろな形に対応できます。

アゴの骨を小さくする手術

最近は、側方が大きい、つまり幅の大きいアゴにも中抜きを行います。

この場合は、水平に切るのは一か所で、その代わり切った下の骨を二か所垂直に切り、その間を抜きます。この場合も、当然段差は出来るので、これをなだらかにする必要があります。

特に女性らしい細くてシャープなアゴになるためには適した方法です。

アゴはどれだけ短くできる?

アゴを短くされたい方に、「何ミリ短くなりますか?」と質問を受けることがよくあります。

短くすればするほどアゴが小さく見えるようになるかは別にして、短くしたい方にとって、どれだけ短くできるかというのは大事な問題です。

削る手術では、骨皮質の厚みの範囲でしか削らないため5ミリ前後というのが一つの目安になると思います。(もちろん骨皮質の厚みにも個体差はあります。)

では、中抜きではどうでしょうか。

アゴはどれだけ短くできる

これが決まるには、いくつかの条件があります。一つは、一旦切り離して残す骨片、つまり中抜きする骨の下に残る骨片の長さです。ここは、最低でも真ん中部分で5ミリは残したいところです。(できればもう少し)

切っていく時に、デザインラインを中心に1,2ミリの幅で骨が削れて粉になるため、実際に切るラインはアゴの下縁から少なくとも6ミリ以上は必要です。

骨片が小さすぎると、プレートやワイヤーを用いた固定が難しくなります。さらに、短くするだけでなく前方へも移動するような場合に、骨片が小さいと少し前方に出すだけでこの骨片と上の骨との接触面がほとんど無くなってしまうため、ほんの少ししか前方に出せなくなってしまいます。

もう一つの条件は、歯根とオトガイ神経からの距離の問題です。

オトガイ神経

余りにも歯根に近いところで切ると歯が脱落する恐れがあるので、この歯根から5ミリ以上は離す必要があります。でも、どちらかといえばこの歯根よりオトガイ神経の方が下に存在するので、こちらの方が切る限界ラインの目安になります。

オトガイ神経は下顎神経の分枝で、下顎骨の中にある下顎管を通ってオトガイ孔と呼ばれる穴から骨の外に出てきます。この神経は、オトガイ孔から出る直前で、一旦この出口より低い所を通ることが多いため、少なくともこの穴より5ミリ程度下で切らないと神経を切断してしまう恐れがあります。

オトガイ神経

もし、この神経を損傷してしまうと、オトガイから下口唇の感覚が消失してしまいます。

今までお話したことをまとめると、中抜きの骨切りラインは、上がオトガイ神経孔の5ミリ下、下の骨切りラインは下顎骨下端の5ミリ上ということになります。

つまり、この二つのラインの間にどのくらいの距離があるかで短くできる長さが違ってきます。

アゴが長い方であれば、8ミリから12ミリ位短くすることが可能です。でも、元々アゴがそれ程長くない方が中抜きをしようとすると、2,3ミリしか抜けない事もあり得ます。

ですから、術前にレントゲンを撮影して、オトガイ神経孔の位置や下顎骨全体の長さを評価する必要があります。この手術の前にレントゲン撮影を行わないクリニックがあると聞いたことがありますが、正確な診断をし適応をきっちりと見極めるために、こういった検査は必須であると思います。


つづきは「アゴの骨、削るだけで小さくなる? PART2~疑似手術」