
脂肪吸引だけでは顎下はすっきりしない!? ペリカン手術の勧め
顎がすっきり見えない原因の一つに、顎下のふくらみがあります。
これを解消するために顎の脂肪吸引や脂肪溶解注射をする方は少なくありませんが、顎の真下のふくらみについてはあまり変わり映えがしなかったという方がかなり多くみられます。

明らかに肥満体型で顎下全体に脂肪がついている方についてはそれなりに効果は出ますが、それほど太っているわけではない方、顎周囲全体に脂肪がついているわけではなく、顎の真下だけが膨らんでもたついて見えるタイプの方はこの傾向にあります。
全体的に脂肪がついているという方でも、顎下については顎の側面の変化より明らかに物足りないという方が多いと思います。
では、どうして脂肪吸引では顎下のふくらみがそれほど変わらないのでしょうか?
これは、顎下のふくらみの原因の多くが皮下脂肪ではないからです。
では、この膨らみは何によるものでしょうか?
これを説明するためには、顎下の解剖を知っていただく必要があります。
顎下を表面から見ていくと、まず皮膚がありその直下には皮下脂肪があります。
そのさらに裏には顎下から首全体に広がる広頚筋という筋肉があります。
広頚筋は薄い膜状の筋肉です。
下顎骨の下縁から、上胸部にわたる頚部の広い範囲に存在することから、広頚筋と呼ばれています。
広頚筋は、頸部や鎖骨周辺の皮膚を上方に引き上げ、下唇や口角を動かしています。
この広頚筋の下にも脂肪が存在します。これを「Subplatysmal fat 」 日本語に直訳するなら「広頚筋下脂肪」といいます。
さらにこの裏側には顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、オトガイ舌筋といった筋肉群、やや外側には舌下腺という唾液を生成する組織があります。
この中で、皮下脂肪以外で顎下のふくらみの大きな原因となるのは、広頚筋とSubplatysmal fat (広頚筋下脂肪)です。
この位置関係を真横から見るとこのイラストのようになります。

皮下脂肪、広頚筋、Subplatysmal fat(広頚筋下脂肪) という3つの関係はお腹のふくらみに似ています。
お腹が大きく膨らんでいる方にもいろいろなタイプがいます。
一般女性に多いのは、シンプルに皮下脂肪が分厚いタイプや、腹筋が弱いことで膨らんで見えるポッコリお腹タイプ、男性に多いのは内臓脂肪が多いことでお腹が大きく膨らんで見えるいわゆるビール腹タイプです。
内臓脂肪が多い男性型の肥満の方や筋肉が弱いポッコリお腹タイプの女性の方に脂肪吸引で皮下脂肪を減らしても、体型はそれほど変わりません。
顎下もこれに似ています。
お腹の内臓脂肪が顎ではSubplatysmal fat 、腹筋は広頚筋、皮下脂肪はそのまま皮下脂肪と考えると理解しやすいと思います。
Subplatysmal fat が多い方や広頚筋が緩んでいる方は、おなか同様どんなに皮下脂肪を吸引してもその形状はあまり変わらず、やはりそれぞれの部位に適した治療が必要になります。
腹筋が元々弱かったり、加齢とともに腹筋が弱ると、腹圧でおなかが前に押されてポッコリおなかになります。
これと一緒で、広頚筋は加齢とともに緩んでくることによって広頚筋の奥の臓器を抑え込む力が無くなり、膨らんできます。それ以外にも単純にたるむことで重力の影響を受け下に膨らみます。
ですから若い方というよりどちらかといえば中高年になってこのふくらみが目立ってきた方の大きな要因になります。
お腹のように自分で腹筋を鍛えることが出来れば良いのですが、広頚筋を自分で鍛えるのは難しいため、一般的に「広頚筋しばり」とか「広頚筋縫縮術」と呼ばれる広頚筋を引き締める治療が適応になります。
具体的には顎下を数センチ横方向に切開し、左右の広頚筋を顎下で真ん中に引き寄せるように縫合して引き締めます。
これによって顎下が引き上がります。
若い方でふくらみが目立つ方の多くは、Subplatysmal fat (広頚筋下脂肪)のボリュームの多さが原因です。
おなかでいえば、内臓脂肪が多いタイプです。
このタイプは広頚筋を引き締めるだけではふくらみは残ってしまいます。
これにはやはり直接脂肪を減らす必要があります。
ただしこの脂肪は脂肪吸引で減らすことはほぼ不可能です。
というより非常に危険です。
先ほどお話しした通りこの脂肪の前後には様々な顎の筋肉が存在します。
この筋肉群は嚥下などに非常に重要な役割を持っていて脂肪吸引で傷つけてしまうと大変なことになります。
それよりもっと怖いのはそれによって出血が生じると咽頭を圧迫し呼吸困難になる恐れもあります。
ですからこのSubplatysmal fatを減らす場合には広頚筋縛り同様、顎下を切開し、直視下で慎重に切除する必要があります。
もちろん脂肪を切除することで広頚筋が余り、緩む可能性があるので、同時に広頚筋縛りも行います。
そして二つの治療を行うことを最近は「ペリカン手術」と呼びます。
この手術の流れを説明します。
まず、顎下を3センチほど横方向に切開します。
この位置は、基本的にはふくらみの頂点で、ふくらみがなくなることで正面から見えにくくなる場所に置きます。

皮下脂肪があればこの傷からも皮下脂肪を切除します。
その後、左右の広頚筋の間を開き、その裏にあるSubplatysmal fat (広頚筋下脂肪)をできる限り切除します。
この時、顎下腺や顎二腹筋のサイズが大きく、ふくらみの要因になっている場合は、この一部も合わせて切除することもあります。

そのうえで、左右の広頚筋を真ん中に寄せるように縫合して広頚筋を引き締めます。

ちなみになぜペリカン手術と呼ぶかはなんとなくイメージで理解していただけてるとは思いますが、あえて説明すると、ペリカンには長いくちばしの下に「のど袋」(咽頭嚢)とよばれる柔らかい部分があります。
ここはゴムのように伸び縮 みし、魚を水ごとすくい取って余分な水を吐き出して捕まえます。
顎下の膨らんでいる状態が、ペリカンののど袋が膨らんでいる状態に似ていることから、この手術をペリカン手術と呼びます。
では、Subplatysmal fat (広頚筋下脂肪)が大きい方とそうでない方のCT画像を比較してみましょう。
まずは、通常の顎下の縦方向の断面、つまり横から見た顎の断面です。

黒い部分が脂肪で、薄いグレーの線に見えているのが広頚筋です。
皮下脂肪の厚みとSubplatysmal fat(広頚筋下脂肪)のボリュームがそれほど変わらないように見えます。
次は、顎下のふくらみが顕著なタイプのCTです。ほぼ同じ位置の断面です。

皮下脂肪の厚みもそれなりにありますが、それにも増してSubplatysmal fat(広頚筋下脂肪)が明らかに大きいのがお分かりいただけると思います。
このタイプに脂肪吸引だけ行ってもシャープな顎下にならないのは、この画像を見るだけでも明らかですよね。
このCT画像の方には実際にペリカン手術を行いました。
まず術前の横顔の写真です。

CT同様、顎下が顕著に膨らんでいるのがお分かりいただけると思います。
ペリカン手術を行って1か月後の写真です。

最近手術したモニター患者さんなので1か月目の写真しかなく、当然まだ腫れが残っていますが、それでも明らかに変化していると思います。
さらに腫れが引いてすっきりしてくるのが楽しみです。
顎下のふくらみが原因で顎がすっきり見えない方、ペリカン手術を検討されてみてはいかがでしょうか?
適応があるかどうかわからない方も、クリニックにお越しいただければエコーなどで顎下のご状態を正確に診断することが可能です。
ぜひご相談ください。
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