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鼻中隔延長って結局何なの?Part3

名古屋院 李 院長 プロフィールはこちら

2回に亘って鼻中隔延長についてお話してきましたが、今回はこの手術のデメリットについても触れてみようと思います。

その前に余分なお話かもしれませんが、鼻中隔延長という手術についての私の思い(?)をお話させてください。

Part1でお話ししたと思いますが、私が美容外科の世界に足を踏み入れた20年前には鼻中隔延長という手術は存在しませんでした。

少なくとも、日本でそういった手術を行っている施設は私の知る限り存在しませんでしたし、その手術自体、私も知りませんでした。

当時、一般的に美容外科で行われていた鼻の手術は、隆鼻術や鼻尖縮小、鼻尖形成、鼻翼縮小といったもので、これは今も多くの美容外科でよく行われている手術です。

私自身も、こういった手術を先輩の先生から学び、現場で行っていました。

その当時の私には、目などの他のパーツの手術と比べ、鼻の整形手術になんとなくですが苦手意識がありました。

それというのも、当時一般的に美容外科で行われていた術式だけでは、患者のニーズにも応えきれない場面に直面するケースが多くあったからです。

特に極度にアップノーズの方や、鼻柱と呼ばれる鼻の真ん中が短い方は、様々な工夫をしてもなかなかきれいな鼻にはならず、鼻の美容外科手術自体に限界を感じていました。

そういった中、鼻中隔延長という手術に出会いました。

この手術は、以前にもお伝えしたように、現在のヴェリテクリニックの理事長である福田先生が考案し、始められた手術です。

当時、私が勤務していたクリニックに非常勤医師として来られていた福田先生が行ったこの手術を初めて見た時には、大げさではなく、本当に大きな衝撃を受けました。

まさに、長年探していたけれども見つからなかったジグソーパズルのピースが見つかったような気分でした。

それによって、鼻の手術は私にとって他の手術同様、もしくはそれ以上にやりがいのある大好きな手術になりました。

私にとって、鼻中隔延長はまさに魔法の杖といってもいいくらいでした。

それ以来、それまで理想的な鼻を作るのが困難と思われた多くの症例が、この術式を加えることで劇的にきれいになるという体験を数えきれないほどしてきました。

「鼻尖形成やシリコンプロテーゼの挿入で十分で、鼻中隔延長は必要ない」という意見をおっしゃるドクターも未だにいますが、前回までのお話でしてきたように、それぞれの手術で限界はあり、鼻中隔延長術を用いなければきれいにならない、鼻中隔延長を用いなければ太刀打ちできない鼻は確実に存在します。

とはいえ、手放しにこの手術を皆さんにお勧めしている訳ではありません。

鼻中隔延長をされたいと考えている方は、これからお話しする鼻中隔延長のデメリットやリスクを知っていただいた上で、するか否かを考えていただけたらと思います。

まず、この手術後に必ず起こることとして、鼻先が硬くなります。

当然、見た目にはわかりませんが、鼻中隔延長をすると、鼻の中心にしっかりとした柱ができるため、鼻先を押してもつぶせなくなります。

特に下方にしっかり伸ばしたケースでは、鼻先を上に向ける、つまりブタ鼻ができにくくなります。

鼻中隔延長の適応になる低く短い鼻の持ち主は、元々の鼻先が柔らかく、押すと簡単に鼻が潰れる方が多いので、この硬い状態になじむのに時間がかかるケースや、稀にどうしてもなじめないケースもあります。

また、右の鼻の穴と左の鼻の間に1枚もしくは2枚の軟骨が入ることによって、この部分が少し太くなります。

移植軟骨の位置や形状を工夫することで、外見的に鼻柱が太くなるのを防ぐ工夫はできますが、少なくとも鼻腔内では今までより太い部分ができます。

それによって、鼻腔もわずかに狭くなります。

鼻腔の入り口に近い部分が少し狭くなるだけなので、これだけで呼吸に影響することはほとんどありませんが、特に術直後は粘膜も腫れるので、それによる鼻閉症状が出る方が結構いらっしゃいます。

時間が経って腫れが引いてしまえば、大抵こういった症状は緩和しますが、中に大きく鼻から息を吸い込もうとしたときなどに今までより吸い込みにくい気がするといった症状を訴える方もいらっしゃいます。

それ以外でも、鼻中隔延長によって鼻が伸びるとその分皮膚が薄くなります。

鼻中隔延長では、延長軟骨と別に、鼻尖部に軟骨を追加で移植することがありますが、伸展により皮膚が徐々に薄くなってくると、この軟骨の形状が浮き出てくることがあります。(これは鼻尖形成でも起こりえます。)

最近は、こういった現象が起こるのを防ぐ対策として、浮き出ても不自然に見えないように、あらかじめ移植する軟骨の形状を工夫しています。

それでも極端に皮膚が薄くなった場合には、不自然に見えることもあります。

どうしても不自然に目立つ場合は、将来的にこの軟骨の一部を削る治療が必要になります。

もう一つのリスクとしては、術後に移植した軟骨が傾くことによって鼻先が曲がって見える可能性があることです。

一般に鼻先の皮膚は、ほかの部分の皮膚より厚く硬いのですが、鼻中隔延長ではこの皮膚を伸展させるため、一時的に皮膚がかなり緊張します。

これが、延長した鼻を押し戻そうとする力になります。

移植した軟骨の強度が弱いと、この押し返す力に負け変形してしまいます。

このような強度を考慮しない無理な延長を行わないことで、この現象は避けることができます。

実際、当院では、この手術を始めた初期のころに比べれば、この術後に変形する現象は圧倒的に少なくなりました。

でも、元々左右差がある鼻や鼻中隔が傾いているケースでは、どうしても多少の左右差が残ることはあります。

手術直後には緊張していた皮膚も、徐々に伸びることで緊張はなくなるので、術後6か月ほど曲がることなく無事に経過すれば、もう大丈夫と考えてよいと思いますが、例外もあります。

これは、自家組織を使わず、他人やブタの軟骨のみで鼻中隔延長を行っている場合です。

当院でも、患者さんの了承を得た上でこういった組織を利用する事はありますが、中心となる柱部分に使うことはなく、あくまで補助材料としての使用にとどめています。

具体的には、先ほどお話しした手術直後の鼻先の緊張する期間を乗り切るために、自家組織の強度の不足を補う目的で使用します。

では、なぜ中心となる部分に自家組織以外のものを使用しないのでしょうか?

自家組織以外の材料だけで鼻中隔延長を行えば、わざわざ自分の耳介軟骨などを採取する手間も無くなりますし、患者さんの負担も減ります。

それでもそうしないのには理由があります。

それは、一旦その部位に定着すればずっと形状を保ってくれる自家組織と違い、他人の軟骨やブタの軟骨は、1年後に同じ状態で残っていない可能性があるからです。

可能性といいましたが、実際、ブタの軟骨や他人の軟骨を使用している方の再手術の際などに、この状況を目の当たりにします。

例えば、もっと鼻を伸ばしたいとか、少し控えめに戻したいなどの理由で、術後半年以上経って再手術を行うと、自家組織はほとんど移植した当時の状態のままに残っていますが、それに対し、補助的に使用した自分以外の軟骨は吸収されて小さくなっていたり、ぐにゃぐにゃと表現していいくらい柔らかくなってしまっているケースを何度も経験しています。

他にも、ブタの軟骨だけで延長を行っているクリニックで手術した患者さんの中に、手術直後に比べ、だんだん鼻が短くなってきたとおっしゃる方がいらっしゃいます。

こういった方の再手術を当院で行うと、移植されているはずのブタ軟骨が委縮してしまっていたり、中にはわずかな痕跡を残すのみで、ほとんどなくなってしまっているというケースもありました。

自分の組織を採取しなくていいというのは魅力的ですが、それに伴うリスクを考えると、少なくとも私自身こういった手術を行うことはありませんし、受ける方もそのリスクを十分理解したうえで検討するべきだと思います。

最後にお話ししたリスクは少なくとも、避けようと思えば避けられるリスクですが、鼻中隔延長を検討している方はぜひ今日お話ししたそれ以外のリスクやデメリットについてもご自分なりにじっくり考えてみてください。