
前回のブログ(目尻切開 効果が大きく後戻りもしない最新術式 Part1)でもお話ししたように、従来の目尻切開は単純に目尻を切って外側に広げる手術でした。
それに対し、今私たちが行っている目尻切開は簡単に言えば目尻を外に引っ張り、さらに下方向にも移動可能な手術です。
下眼瞼には前回のブログで説明したグレーラインのすぐ下に瞼板という硬い板のような組織があります。

この瞼板は、瞼を支える骨格のような役割を果たしています。
同じ構造は上眼瞼にもあり、埋没法の瞼板法という術式の際に聞かれたことがある方もいらっしゃると思います。
この瞼板は前述のとおり硬いしっかりとした組織で、グレーラインにつながっているため、瞼板を外に引っ張ればグレーラインもそれに伴って外に動きます。
つまり、目尻切開の際に、瞼板を外に引っ張ることによって下眼瞼のグレーラインそのものを外側に移動させ目尻を広げるのがこの術式です。
さらに言えばグレーラインの外に目尻を作るのではなく、グレーラインそのものを外側に動かすのがこの手術のポイントです。
当然外に引っ張るためにはそれをどこかに固定する必要があります。
ご自分の目尻を指で触っていただくと、目尻のすぐ外に骨をさわれると思います。
これは目を収めている眼窩の周囲を構成する骨で、この部分は頬骨の一部になります。


骨にはその表面に骨膜という硬い丈夫な膜があります。
この骨膜に瞼板の外縁を固定することで下眼瞼のグレーラインを外側に移動させます。
ここでもう一つ大切なことがあります。
目尻の位置を外に移動させるだけであれば、目尻を切開せず上下のグレーラインのつながりを保ったまま瞼板と骨膜を固定するだけでいいように思えます。
でも、この方法には大きな問題があります。
それは上眼瞼のグレーラインを外に引っ張ると、目が開きにくくなるということです。
ご自分で今の目尻を外に引っ張ていただくと、このことが簡単にわかっていただけると思います。
明らかに、上まぶたが下がっていわゆる下垂したような状態になりましたよね。


つまり、下眼瞼のグレーラインを外に引っ張ることは問題なくても上眼瞼のグレーラインを外に引っ張ってはいけないということです。
ですから、この術式では下眼瞼と上眼瞼の間は従来の術式と同様、一旦切り離して下眼瞼のグレーラインだけを外に移動させます。
そのため上眼瞼に関しては従来の術式同様、切開で広がった部分にはグレーラインは存在しなくなります。
しかし、前回のブログの最初で触れたように、上眼瞼は元々まつ毛でグレーラインそのものがあまり見えていないこと、さらにまつ毛は外に伸びるため、上眼瞼の切開で広がった部分はまつ毛で隠れ目立ちません。
この術式を前回同様、イラストにしてみました。(まつ毛は省略しています)

稚拙なイラストで申し訳ありません💦
上の矢印のラインで切開し、下眼瞼の瞼板を外側の眼窩の骨膜に固定することで、下眼瞼のグレーライン自体が新しい目尻の位置まで移動しています。
イラストのように上眼瞼の広がった目尻にはグレーラインが存在しませんが、実際の目ではこの部分はあまり目立ちません。
ここで、この術式の特徴とメリットを整理してみたいと思います。
前回従来の術式の問題点を3つ挙げました。
改めて挙げると
1.目尻切開で広げた部分は細く見た目に分かりにくい
2.後戻りしやすい
3.切開で広げた部分はグレーラインが存在しない
では新しい術式でこれらの問題点が解消できたか検証してみましょう。
まず1ですが、瞼板の固定位置を下方に下げることによって上下のスペースを従来の術式より広げることができます。
2についても、瞼板と骨膜を強固に固定することで、後戻りを防げます。
3については先ほどからお話ししているように、少なくとも見た目に目立つ下眼瞼のグレーラインは新しい目尻の位置まで存在します。
というわけで、ほぼ従来の術式の問題点を解決できていると思います。
さらにプラスアルファのメリットがあります。
これは問題点の1でも触れたことですが、瞼板をどの高さの頬骨の骨膜に固定するかによって目尻の高さを変えることができます。
このことをイラストで説明します。

左から順番に、瞼板と骨膜の固定位置を下げています。
これだけでかなりイメージが変わります。
つまりこの術式では、目尻を外に広げるだけでなく、下げることも可能です。
目尻を下げる手術として目尻靱帯移動術がありますが、この手術を行わなくても目尻切開だけで目尻の位置を大きく下げることができます。
そして、下げれば下げるほど目尻の縦方向のスペースは広がります。
上のイラストの固定位置の違いで、どのくらいスペースの広がりに差があるかを見てみましょう。

目尻切開で広がった部分を水色で塗っていますが、かなり違いますよね。
だからと言ってあまり固定位置を下げすぎると、不自然な目になってしまうので注意が必要です。
当院では手術の前には、どの程度下がった感じがご自身の好みに合うのかをシミュレーション画像を用いて確認しているのでご安心ください。
では最後にこの術式で手術している目尻切開の実際のモニターの方を見てみましょう。
それぞれの症例で、正面と斜めからの術前後写真を提示しました。
それぞれの症例でご希望される目尻の高さが違うので、変化の程度には違いはありますが、
外方向に目尻は広がるだけでなく、目尻の位置が下がることで縦方向にも広がって、いわゆる「タレ目尻」になっています。
下まぶたのグレーラインも、手術で広がった新たな目尻位置ギリギリまで伸びているので、まつ毛が目尻まで存在していることもお分かりいただけるお思います。
モニター1 22歳女性

モニター2 39歳女性

モニター3 26歳男性

ヴェリテクリニックでは、すべての手術において今現在の技術に満足することなく、より優れた技術を絶えず追求しています。
この目尻切開も数年後にはさらに進化を遂げているかもしれません。
“ 目尻切開 効果が大きく後戻りもしない最新術式 Part1今回はいまヴェリテクリニックで行っている目尻切開についてお話ししようと思います。
目尻切開については大昔のブログでもお話ししましたが、その時とは術式も変わり、術後の変化も以前より大きくなったので、それについて触れたいと思います。
ちなみに以前のブログはこちらです
もう一度おさらいを兼ねて、この部分の解剖について触れたいと思います。
上下眼瞼の瞼縁の形状をよく見てみると、まつ毛の生えている部分の内側の辺縁が淡いピンク色の帯のような形態をしているのが分かると思います。
上眼瞼はまつ毛で隠れてしまっていることも多いのですが、下眼瞼はほとんどの方が見えていると思います。
この帯を、gray line(グレーライン) と言います。ピンクなのになぜグレーなのかについては以前のブログで触れたので省略します。

上下のグレーラインがぶつかる目尻の角(外眼角)を外側方向に切開し、上下を縫い合わせるのが以前の目尻切開でした。

この時、少しでも目尻が大きく広がるように上下の皮膚を切除し縦方向に引っ張る術式もあります。
「以前の」と言いましたが、目尻切開で検索するとほとんどのクリニックでこの術式が載っているので、今でもこれがスタンダードな術式であると思います。
この術式にはいくつかの欠点があります。以前にも触れたことですが大切なことなので改めて触れておきます。
一つは目尻切開で横に広げた部分は細く見た目に分かりにくいという事です。
ちなみに先ほどのイラストで目尻切開による変化はお判りいただけたでしょうか?
水色のスペースが目尻切開で広がった部分です。

目尻に切れ込みができているだけで、上下に大きく広がるわけではないので、正直微妙な変化です。
上下の皮膚を切り取る事で多少広がり分かりやすくなりますが、それでも限界があります。
二つ目は後戻りし易いという事です。
切開した部分の上下が再癒着する事で後戻りしてしまいます。
先ほども触れたように、切開でできたスペースは狭いので、時間とともに再癒着して後戻りしてしまいます。
これを防ぐ目的で、グラマラスライン手術(下眼瞼下制術)を同時に行うことを前回のブログでは提案していますが、単独手術ではある程度の後戻りは避けられないと考えています。
3つ目は、先ほどお話ししたグレーラインが途切れてしまうという事です。
簡単に言えば、この術式で広げた部分の目尻にはグレーラインが存在しないという事です。
上眼瞼は元々まつ毛でこのグレーラインが隠れていることが多いのでそれほど問題にはなりませんが、下眼瞼は明らかに途中からグレーラインが途切れ、当然その先の部分にはまつ毛も生えません。

これについては、手術された当事者でも気づいていない場合も多いのですが、手術を受ける以上事前にこの事実を知っておくべきであると思います。
私が昔この術式で行っていた時には、術前のカウンセリングで必ずお伝えしていました。
ここからがいよいよ本題です。
今現在ヴェリテクリニックでは、この従来の術式の欠点をすべて解消し、なおかつプラスαの効果のある術式で目尻切開を行っています。
次はこのことについてお話ししようと思います。
>>目尻切開 切開効果が大きく、後戻りもしない最新タレ目尻拡大術 Part2
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医者にとって一番大切なことは患者さんとの信頼関係を築いていくことです。
その為には1人1人の患者さんに最適な医療を提供していくことと考えています。
日本外科学会認定医/日本抗加齢医学会認定 日本抗加齢医学会専門医/日本形成外科学会会員
経歴1992年
金沢大学医学部卒業1992年
名古屋大学第一外科1992年
静岡済生会病院外科1996年
大垣市民病院外科2000年
坂下病院外科医長2001年
大手美容外科院長 就任2005年
ヴェリテクリニック入職2008年
ヴェリテクリニック名古屋院院長 就任2026年
ヴェリテクリニック統括院長 兼 名古屋院院長鼻の穴が目立つと一言で言っても、この原因は一つではありません。
例えば以下のようなタイプがあります。イメージイラストを作ってみました。
1 シンプルに鼻の穴も大きく目立つタイプ

2 アップノーズで鼻の穴のある面が正面から見えやすいタイプ(いわゆる豚鼻)

3 鼻の穴の形が特徴的で、必要以上に存在感が強くなっているタイプ

1のタイプは単純に小鼻の内側の一部を切除することで目立たなくなります。いわゆる内側の鼻翼縮小です。
その際、却って小鼻の外側の丸みが増えてしまうタイプの方は、一緒に外側の鼻翼縮小を行う必要があります。
例えば先ほどの1のタイプであれば、鼻翼縮小の内外両方を行うことで鼻の穴が小さくなり目立たなくなります。
(写真の黄色が内側切除の位置、青が外側切除のデザインです)

ここを切ることでイラストのような目立たない鼻になります。


2のタイプ いわゆるアップノーズの鼻は、正面から鼻の下面が見えやすいのが特徴です。
そうなると当然ですが鼻の穴が丸見えになります。
これをイメージできるよう手の平に黒い丸(鼻の穴のつもり)を画用紙で作って貼ってみました。
少しずつ手のひらの角度を変えてみます。




角度を変えると黒丸の見え方が変わりますよね。つまり黒丸のサイズは一緒でも目立ち方が変わるということです。
一番上のような見え方は実際の鼻ではありませんが、2番目と3番目くらいの角度の違いでも見え方が大きく変わるのがわかると思います。
つまりこのタイプは、鼻の穴の大きさより穴のある鼻の下面が正面からよく見えることが目立つ原因なので、鼻翼縮小しても単純に見える鼻の穴が小さくなるだけで、鼻の穴が見えなくはならず、目立つことに変わりはありません。
ですから鼻翼縮小ではなく、鼻の下面が見えにくくなる手術を行う必要があります。
具体的には、鼻中隔延長が一番の適応になります。
この手術は、鼻先を構成している鼻翼軟骨を動かすことで、鼻柱の長さや角度を変えることができます。
14年前のブログで提唱した「四角い鼻」がそれにあたります。アップノーズな鼻は基本三角形なので、鼻柱を下げることで四角形の鼻にします。


鼻の穴のある面が水平に近くなることで穴のある部分の面が下を向くので、正面から見えにくくなります。


具体的な術式については鼻中隔延長術を参照してください。
3のタイプで最も目立つのは、鼻孔縁(鼻の穴のふち)のカーブが強く、正面から見て鼻の穴が尖って見える方です。
このタイプは注意が必要です。
なぜなら、1のタイプの方が行うような内側の鼻翼縮小を行ってしまうと、鼻翼が内側に寄ることによって鼻孔縁が余計に尖ってしまいます。
場合によっては尖るだけでなく上に上がってしまいます。
このタイプの治療は、このカーブをなだらかにすることです。

そのために行うのが、鼻孔縁形成です。
この手術は、耳介から皮膚と軟骨がセットになった組織を採取し、鼻孔縁の裏側つまり鼻の穴の中に移植して鼻孔縁を下げる手術です。
詳細は鼻孔縁形成を参照してください。
鼻の穴の尖った感じがなくなることで、劇的に鼻の穴が目立たなくなります。


この尖がりタイプの方は、この手術で劇的に鼻の穴の存在感が無くなるので、本当にお勧めで、私の大好きな手術の一つです。
もちろん、1,2,3のタイプが合わさっているケースもあります。
この場合、複合的な手術が必要になるケースも少なくありません。
ご自分がどんなタイプであるのかを手術の前にしっかり把握する必要があります。
ヴェリテクリニックには、すぐれたシミュレーションソフトがあり、それぞれの手術でどんな変化が得られるのかを術前に視覚的に把握して手術を選択していただけます。
鼻翼縮小のような組織を切除する手術は、基本後戻りできない治療です。
後悔のない手術を受けていただけるよう私もできる限り正確に術後のイメージを術前にお伝えするので、皆さんも慎重に治療法を選択してください。
今回、約7年ぶりにこのブログを更新しました。
様々なSNSで多くの若い先生方が美容外科の治療についてお話しされているのを見て、私の役目は終わったと感じていましたが、あえて動画や写真ではなく、文字で語れるブログだからこそできることが残っているのではないかと再開してみました。
四半世紀以上この分野に携わってきて、私自身も美容医療に対する考え方や取り組み方が昔とは変わってきたこともあります。
ですから以前書いた内容と重なることも、最近の私の思いを織り交ぜながら改めて触れていきたいと思っています。
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※本記事は、2026年2月時点の最新の医学的知見に基づき、李医師が内容を監修・アップデートしています。

目頭切開と言う手術があります。簡単に言うと、
蒙古ひだを切ることで眼が大きく見える、離れて見える眼が近づく、二重整形後の二重のラインが平行型になりやすくなるなどのメリットがあります。
蒙古ひだというのは、形態人類学的にモンゴロイドと呼ばれる人種に特徴的な形状と言われています。実際にネグロイド(黒人系)やコーカソイド(白人系)には見られません。
ちなみに私の持っている眼科学の教科書には蒙古ひだという言葉は載っていません。代わりに内眼角贅皮(epicanthus)という言葉でこの蒙古ひだの事を説明しています。
ただし600ページ以上ある本の内容としてはあまりにもそっけなく、たった2行程度で「上眼瞼よりの皮膚の襞が内側に向かうために、内眼角部や涙球が覆い隠される状態。(眼科学 メディカル葵出版)」と説明されているだけです。それ以外ではDown症候群や胎児期アルコール症候群といった先天性疾患の身体的特徴として多少触れられています。
こういった疾患では通常より極端に発達した蒙古ひだが特徴です。実際、眼科学的に内眼角贅皮というと、こういった疾患に伴う特殊な蒙古ひだを示すことが多く、そのため蒙古ひだ=内眼角贅皮と言いきってしまって良いのか多少疑問が残ります。
いずれにせよ眼科学の教科書でほとんど触れられていない所からも、機能的にはあまり意味のない器官のようです。
一説には北方モンゴロイドが寒さから眼を守るために発達したであるとか、砂漠の砂から眼を守るために発達したと言われているので、機能的に全く無意味という事は無いのかもしれません。
でも、白人や黒人の方々が蒙古ひだが無くて困ったという事は聞かないので、少なくとも目頭切開をして機能的に何か弊害があることは無さそうです。

この部分(眼の内側)を解剖学的には内眼角部と呼びますが、ここには涙丘というピンク色をした膨らみがあり、その外側には余った涙を一旦貯める涙湖という器官があります。
白人や黒人ではこういった器官が露出していますが、蒙古ひだのある方はこれらが全体もしくは部分的に隠れています。
最初にもお話ししましたが、目頭切開は蒙古ひだを切開することで目頭の隠れている部分=内眼角部を出す手術です。

つまりゼロから新しく目頭の形を作り出す訳ではありません。あくまで内眼角部の今まで隠れていた部分が見えるようになった結果として、目頭の形が変わります。
手術の際に「下方に尖った目頭にしたい。」とか、「内側に大きく開いた目頭にしたい。」など希望をおっしゃる方は多いのですが、あくまで手術で出来るのは、その方の隠れている内眼角を露出させることだけです。
つまり、その方の元々の内眼角部の形以上に下げたり大きく広げる事はできません。無理に引っ張ることで多少さらに形は変わるかもしれませんが、かなり不自然な状態になってしまいますのでお勧めできません。
ただし、この蒙古襞の切除の仕方、つまり隠れている内眼角をどんな形に露出させるかを工夫する事で、ある程度であれば術後の目頭の形態をコントロールすることは可能です。
蒙古襞の無い白人や黒人の内眼角(目頭)の形にも多様性があるように、蒙古襞に隠された東洋人の内眼角にもさまざまな形態があります。
同じように蒙古襞を切ったつもりでも思った以上に目頭が開きすぎてしまったり、逆にさほど変化が無かったりする事もあるので、術前のカウンセリングでどの程度変わるのか(変わりたいか)、どういった形にしたいかなどドクターと充分相談した上で手術に臨んでいただければと思います。
目頭切開の術式は、大きく分けると2つの方法になります。
前者の代表的な術式は、内田法やIrit法などです。後者で有名なのはZ法です。
特に前者にはその切除の仕方で非常に多くの術式があり、それぞれに名前が付いていますが、きりが無いのでここでは省略します。
前者の方法に共通しているのは、皮膚を切除し引き寄せて縫合するため、術後の傷にひきつれ(緊張)が起こり易い事です。そのため傷に肥厚性瘢痕が生じ目立ってしまったり、引っ張られることで傷の幅が広がると、その分後戻りしてしまいます。
もちろん、なるべくひきつれが生じないように切除の仕方(形)にいろいろな工夫がされていますが、それでも全く傷に緊張がかからないようにするのは難しいと思います。
Z法は字のごとくZ型に皮膚を切開してその上下(前後)の皮膚を入れ替える事で目頭を開く方法です。この術式では、入れ替えの際に皮膚の盛り上がり(ドッグイヤー)が生じた際だけその部分の皮膚を切除する事はありますが、それ以上に大きく皮膚を切除する事はありません。
ですから、傷に大きな緊張がかからず非常に奇麗に傷が治ります。とうぜん後戻りもほとんどありません。それ以外にも、メリットはあります。
例えば、もし蒙古ひだを元の形に戻したい時などは、最初の手術と逆に皮膚の入れ替えをすることで、完全とは言えないまでもかなりそれに近い状態に戻すことが可能です。
皮膚を大きく切除するタイプの目頭切開を行った方も、内眼角の内側の皮膚を逆Zのデザインで切開して蒙古ひだを作る事は可能ですが、最初の手術で皮膚を切除している分この部分の皮膚に余裕がありませんので、元の状態まで戻すのはかなり難しくなります。

Z形成は瘢痕拘縮・陥凹変形などの治療によく用いられる方法で、基本的には2つの三角皮弁を入れ換えることで2点間の距離の延長を行います。切開線がZ字型になるため、このようによばれています。
この図は、Z型に切開し(オレンジのライン)、XとYという二つの三角皮弁を入れ替える事で縦軸の長さが伸びていることを現しています。これを利用して拘縮部の伸展などを行います。
この図をよく見ると、横軸は逆に短くなっている事が分かります。通常の治療で用いる場合とは逆に、目頭切開ではこの横軸が短くなる事を利用します。
つまり、蒙古ひだの横方向の長さ(幅)を短くするためにこの手技を用います。といってもこの図だけでは何の事か分かりませんよね。

蒙古ひだは内眼角部を覆う皮膚の膜です。正面から見える蒙古ひだの裏側はどうなっているかといえば、ここにも皮膚があります。
つまり蒙古ひだは表裏二枚の皮膚で出来ています。これが涙丘の上で浮いている状態といえばなんとなく分かって頂けるでしょうか。この特殊な形態のために、目頭切開のZ法が理解しづらくなっています。
ではここで、実際の目頭切開のデザインを見てみましょう。

むらさき色に引いたラインが切開線です(写真左)。するどい方は気付かれたと思いますが、Z法なのにZの形じゃないですね。どちらかと言えばV型です。実は先ほどお話した蒙古ひだの裏側部分に、切開線の続きが隠れています。
この部分が表に出るよう指で蒙古ひだを内側に引っ張ってみましょう(写真右)。
すると、もう一本の線が出てきて、切開線のデザインがZ型になりましたね。このデザインに沿って切開を加えたのち、Z形成の要領で三角皮弁の入れ替えを行います。
上で説明した入れ替えで目頭が開く部分というのが分かりにくいと思いますので、ここからはイラストと折り紙を使ってこの手術を体験してみましょう。

まず、折り紙を一枚用意したら、端から1/4位の位置で縦に折ります。
この折った部分の表裏がそのまま蒙古ひだの表裏になります。

次に白紙の紙に大きめに眼のイラストを描いたものを用意します。
このとき蒙古ひだの無い眼、つまり内眼角部がしっかり見えている状態に描きます。

先ほど用意した二つ折りの折り紙で、このイラストの内眼角部を覆うと蒙古ひだのある目頭の完成です。
とてもシンプルですね。この折り紙を蒙古ひだであると思ってください。

この折り紙に写真のように線を引き、これに沿ってハサミでカットします。これがZ法の切開になります。
といってもこのデザインではZ型になっていませんね。どちらかと言えばV型です。
でも大丈夫です。先ほどお見せした実際のオペのデザインと一緒で、Zの一辺が裏側に隠れています。

一旦、折った部分を戻してみましょう。ハサミでカットしたラインがZ型になっていますね。
通常の平面でのZ形成と違って、蒙古ひだのZ法は立体的なデザインであるため、奇麗なZではなくやや変形したZですが、それでも角が二つあるという意味ではZ型と表現して良いと思います。


これを再度元の折った状態に戻し、Vの角を支点に下向きの三角が横に向くように折り込みます。
鶴を折る時にも同じような工程がありましたね。この作業がZ法の皮弁の入れ替えになります。

一見一つの皮弁しか移動していないように見えますが、折り紙を広げた状態で考えると二つの三角弁の入れ替えになっています。

では、これを先ほどの眼のイラストと合体させて、この入れ替え作業を行ってみましょう。如何ですか。今まで隠れていた内眼角が出てきましたね。
三角弁の上の方に皮膚(紙)が余っていますが、実際の手術でもこの部分にすこし皮膚が余る(ドッグイヤーと言います)ので、これを切除します。紙と違って皮膚には柔軟性があるので、実際に余る皮膚はほんのわずかです。
この治療の大きなポイントは、蒙古ひだが無くなっているにもかかわらず、余った少量の皮膚の切除以外に一切皮膚を切り取っていない事です。という事は、従来の方法と違って切除による緊張が傷にかかりません。そのため、非常に奇麗に傷が治りますし、後戻りもほとんどおこりません。
さらに、もし蒙古ひだを元の形に戻したい時は、同じ傷を切開して最初の手術と逆の手順で元の位置に戻るよう皮膚の入れ替えを行うだけです。ドッグイヤーを切除しているので、完全とは言えないまでもかなり元に近い状態に戻すことが可能です。皮膚を大きく切除している場合にはこういう訳にはいきません。
こうお話しすると、Z法が他の方法に比べすべての面で優れているように見えますが、欠点もあります。
皮膚を切除するタイプの目頭切開は、まず控えめのデザインで始めてみて、足りなければさらに皮膚を追加切除していくことで微調整ができます。つまり、少しずつ形を調整していく事が出来ます。ということは、あまり経験の無いドクターが行ってもそれほど大きなミスにはなりません。
それに比べZ法のデザインは一発勝負なので、どういうデザインをすれば最終的にどんな目頭になるのかしっかり把握した上で手術を行う必要があります。特にこの手術は通常のZ形成と違いやや変則的なZ形成となるので、こればかりは多少の経験が必要です。このデザインさえきっちりできれば、個人的にはZ法はもっとも合理的な目頭切開の術式であると思います。
牽引テスト(セルフチェック向き)
鏡を見ながら、目頭の皮膚を指で軽く顔の中心方向に引っ張ります。
この時に 隠れていた赤い部分(涙丘)はっきり露出、つまり変化があった場合は蒙古襞が存在します。
この通常時と引っ張った時の違いが大きい方ほど蒙古ひだが大きいと考えられます。
逆に、引っ張ってもほとんど変化が見られない場合は蒙古ひだが無いか、小さいということになり、この場合目頭切開をしてもほとんど変化はありません。
蒙古ひだがある目頭は、上眼瞼から下眼瞼にかけて皮膚が連続して目頭を覆っています。
どこまでかぶさるかによってその程度は異なります。

蒙古ひだが丸く涙丘全体もしくはそのほとんどを隠しているタイプです。
目頭切開での変化量も大きいため、大きな変化を望まない方は、ある程度蒙古ひだを残す術式の工夫が必要になります。

蒙古ひだはありますが、涙丘の一部は普段から見えているタイプです。
日本人に最も多いタイプで、ある意味ナチュラルともいえます。

皮膚補被覆はないか、あっても涙丘の見え方にほとんど影響しないタイプ。
このタイプは目頭切開してもほぼ形状に変化はありません。
メリットとしては、適度に蒙古ひだがある目は幼さや優しさを強調するので、目元の印象が強くなりすぎず、マイルドになります。
適度なサイズの蒙古ひだは、日本人の目としてはナチュラルに見えやすいこともメリットの一つです。
デメリットとしては、目が離れて見えやすいこと、小さく見えること、平行型の二重が作りにくいことなどが挙げられます。
メリットとしては、目の横幅が広がることで目が大きく見えます。
適度に涙丘が露出することで、シャープ・大人っぽい印象になります。
無理に幅を広げすぎずに、平行型の二重を作りやすくなります。
デメリットとしては、目がきつい印象になることがあります。もともと目と目の間が近い方はさらに近づくことで寄り目になってしまいます。
蒙古ひだがある方が平行二重を作るためには、かなり二重幅を広くする必要があります。
基準としては、目を閉じたときに現れる上眼瞼側の蒙古ひだの始まりより上方に二重を作ることです。
人によっては、かなり幅広の二重になるため、不自然な二重やハム目になりやすく、後戻りの可能性も高くなります。
つまり、ある程度蒙古ひだが強い方にとってのナチュラルな二重は末広型ということです。
また、蒙古ひだが残った状態で平行型の二重を作ると、目頭側の二重のラインが二股に分かれて見えることが多く、これも不自然に見える要因になります。


目頭切開を行う場合でも、蒙古ひだをある程度残した自然な目頭切開の場合には、完全な平行型よりミックス型レベルの方がナチュラルに見えやすいのでお勧めです。

・二重整形・目元整形
・二重埋没法(切らない二重術)
・二重切開法
・スカーレス(二重形成)
・目頭切開法
目尻切開という手術は「やってもあまり変わらない手術」という評価が世間一般にはあるようです。
実際、過去にこの手術を受けた経験のある方の中にも、「手術したけど、あまり変化を感じない。」とか、「以前と変わったのは分かるけど、期待した程ではない。」とおっしゃる方がたくさんいます。
では、なぜ目尻切開にはこういったネガティブな評価が多いのでしょうか?本当に変化がそれほど無いのでしょうか?
目尻切開と言う手術は、その名の通り「目尻、つまり目の外側を切開して外(側方)に向かって目を大きくする手術」です。
同じような考え方で、内側に目を広げる手術を目頭切開と言いますが、この二つの手術は名前こそ一字違いですが、実は全く違う手術です。

目頭切開をされた方は、程度の差はありますが、まず術後変化を認識されます。
この理由は、目頭自体の構造にあります。目頭側には、白目の内側に涙丘というピンク色の粘膜があり、東洋人の多くは、この部分の一部(もしくはすべて)が蒙古ひだという皮膚が作る膜で隠れています。これを切開し、隠れていた涙丘を露出するのが目頭切開という手術です。
つまり、もともと目頭には蒙古ひだで隠されている部分があるため、これを露出する事によって大きな変化が得られるという事です。
それに対し、目尻には、蒙古ひだやそれによって隠される涙丘のような構造はありません。

では、目尻側はどういった構造になっているのでしょうか。
目尻の一番外側を外眼角と言います。
ご自分の目尻触っていただくと分かりますが、外眼角のすぐ外には骨があります。
これは眼を囲む眼窩骨で、この外眼角と眼窩骨の距離は2から4ミリ程度しかありません。

この部分の皮膚の直下には、眼球との間に小さなポケット(結膜円蓋部)があります。
ポケットと言っても、眼球と皮膚の裏側の粘膜は通常接しているので、普段からそこに大きな空間が存在している訳ではありません。
自分で目尻を外に引っ張っていただくと、このポケットが確認できます。
このポケットを覆う皮膚を切開して隠れている白目を出すのが目尻切開です。
ただし、先ほどもお話ししたように外眼角と眼窩骨の間は非常に狭く、当然このポケットの幅もごくわずかです。つまり、このポケットを開放しても、それによって見える白目はほんの少ししかないということです。
一つ目の答えが見えてきましたね。そうです。元々隠れている部分が大きい目頭に対し、隠れている部分が少ない目尻切開は、目頭切開ほどの変化が無くて当然なのです。
因みに、元々蒙古ひだが無い西洋人であれば、目頭切開してもあまり変化は期待できません。そういう意味では、目尻切開はある意味西洋人に目頭切開をするような治療と言えなくもありません。

シミュレーションを使って目尻切開を再現してみましょう。まず、アップでお見せします。左は、シミュレーション前、右が後です。
如何ですか。けっこう開いていますね。明らかに窮屈だった目尻が外側に広がったのが分かります。

術後の充血や浮腫や傷周囲の赤みといった修飾の無い、形状の違いだけのシンプルな手術前後の比較をしていただきたかったので、あえてシミュレーションにしてみましたが、実際の手術での平均的な変化に近いと思います。
今度は上がシミュレーション前で下が後です。
おや、なんとなく前後の写真の差が分かりにくくなってしまいましたね。

では、さらに遠景にして、顔全体で確認してみましょう。
アップではあれほど大きく変わっていたはずの目尻の違いがほとんど分からなくなってしまいましたね。
この原因はいくつかあります。
一つには、目尻切開で広げる部分は、元々周囲より奥まった深い谷間になっていて、切開した部分が分かりづらいことがあります。人によっては既に術前からこの谷間が目の一部に見えていることもあります。
二つ目は、この部分が上まぶたのまつ毛や皮膚で隠れやすいということが挙げられます。特に大きなつけまつ毛をされているとほとんど隠れてしまいます。
それ以外でも、元々アイラインやアイシャドウなどで、目を外側に大きく見えるようなメークをしている方はにとっては、目尻切開で広がった部分は元々手術前から目尻に見えていた部分であるため、変化をあまり体感できません。
つまり、二つ目の理由をまとめると、
“目頭切開などに比べ、目尻切開で広がった部分は見えにくいためその効果が分かりにくい”
という事です。
いえ、そんなことはありません。
ただし、いくつかポイントがあります。
そのキーとなるのは「適応の見極め」と「他の治療とのコンビネーション」です。
まず適応についてですが、目尻の円蓋のポケットが元々小さい方は、切開してもそれ以上は広がらないので大きい変化は望めません。

これは、ご自分で目尻を外に引っ張っていただければ確認できます。引っ張って露出した部分が白目ではなくすぐに粘膜になってしまう方は、適応がありません。
出来れば最低でも1.5ミリ以上は白目が隠れていないと、手術しても効果が認識できないと思います。
目尻切開をした後の目尻の広がり方には、タイプがあります。
2.のタイプの場合は、どうしたら良いのでしょうか?
これが先ほどお話ししたもう一つのキー、つまり「他手術とのコンビネーション」です。横にしか広がらないものを上下に広げて見せるためには当然、上下方向に引っ張る必要があります。

この手術は、「グラマラスライン手術(下眼瞼下制術)」と言われるもので、下まぶたのラインを下げることを目指す治療です。
これ自体が下方向に目を大きくすることを目指す治療ですが、目尻切開と組み合わせる事で、相乗効果を目指せます。
上まぶたについても、眼瞼下垂手術で上方に眼が開くことで、目尻の切開部分が縦に広がります。
一つ目は、通常目尻にあるものが、目尻切開した部分には無くなると言う事です。

上下眼瞼の瞼縁の形状をよく見てみると、まつ毛の生えている部分の内側の辺縁が淡いピンク色の帯のような形態をしているのが分かると思います。
この帯を、gray line(グレーライン) と言います。ピンクなのになぜグレーなのは不思議なところですが、おそらく英語のgrayには顔色などが白っぽいという意味もあるため、やや白っぽく見えるこの帯をそう呼んだのではないかと思います。(あくまで私の想像です。)

目尻切開では、この上下のグレーラインの交わる部分から外に向かって切開し、目尻を広げます。
当然、切開によって新しく出来た目尻にはこのグレーラインが存在しませんし、まつ毛も生えません。
ただし、これはそれほど目立つものではなく、治療を受けたご自分でも気付かない事もよくあります。
でも、この事を知らずに手術して、後でまつ毛の無い目尻にショックを受けないように、あらかじめ知って頂いておいた方が良いと思います。

さらに付け加えると、このグレーラインがある部分と無い部分の境界に小さな角が出来る事があります。
この角が気になる方は、後日CO2レーザーと言う皮膚を蒸散させるレーザー(黒子をを取る際などにも使用します)でこの部分を削ってなだらかにします。
もう一つの注意点は、元の目尻の状態や切開の程度によっては、目尻の結膜が見える事がある事です。
元々、目頭と違って目尻側では赤い粘膜(結膜)は見えていないのが普通の状態です。これが目尻切開後に、絶えず露出している状態になる事があります。
これには大きく分けて二つのパターンがあります。
一つは、目尻ポケットの大きい方に手術を行った際におこります。このタイプに目尻切開を行うと、白目と目尻の皮膚の間にすき間ができ、斜めから見た時などに、この隙間から赤い結膜が見える事があります。
もう一つは、隠れている白眼が小さく目尻切開の適応が無い方や、隠れている白目部分以上に切開して無理に目尻を広げた場合に良く見られる症状です。この場合、切開して広げた部分に結膜が不自然に露出した状態になります。
これも僅かであれば気になりませんが、度が過ぎるとちょっと異様な雰囲気の目尻になってしまうので要注意です。
何事も過ぎたるは及ばざるが如しですね。
・二重整形・目元整形
・目頭切開法
・目尻切開法
・グラマラスライン(タレ目形成・下眼瞼下制術)
・眼瞼下垂

2回に亘って鼻中隔延長についてお話してきましたが、今回はこの手術のデメリットについても触れてみようと思います。
その前に余分なお話かもしれませんが、鼻中隔延長という手術についての私の思い(?)をお話させてください。
Part1でお話ししたと思いますが、私が美容外科の世界に足を踏み入れた20年前には鼻中隔延長という手術は存在しませんでした。
少なくとも、日本でそういった手術を行っている施設は私の知る限り存在しませんでしたし、その手術自体、私も知りませんでした。
当時、一般的に美容外科で行われていた鼻の手術は、隆鼻術や鼻尖縮小、鼻尖形成、鼻翼縮小といったもので、これは今も多くの美容外科でよく行われている手術です。
私自身も、こういった手術を先輩の先生から学び、現場で行っていました。
その当時の私には、目などの他のパーツの手術と比べ、鼻の整形手術になんとなくですが苦手意識がありました。
それというのも、当時一般的に美容外科で行われていた術式だけでは、患者のニーズにも応えきれない場面に直面するケースが多くあったからです。
特に極度にアップノーズの方や、鼻柱と呼ばれる鼻の真ん中が短い方は、様々な工夫をしてもなかなかきれいな鼻にはならず、鼻の美容外科手術自体に限界を感じていました。
そういった中、鼻中隔延長という手術に出会いました。
この手術は、以前にもお伝えしたように、現在のヴェリテクリニックの理事長である福田先生が考案し、始められた手術です。
当時、私が勤務していたクリニックに非常勤医師として来られていた福田先生が行ったこの手術を初めて見た時には、大げさではなく、本当に大きな衝撃を受けました。
まさに、長年探していたけれども見つからなかったジグソーパズルのピースが見つかったような気分でした。
それによって、鼻の手術は私にとって他の手術同様、もしくはそれ以上にやりがいのある大好きな手術になりました。
私にとって、鼻中隔延長はまさに魔法の杖といってもいいくらいでした。
それ以来、それまで理想的な鼻を作るのが困難と思われた多くの症例が、この術式を加えることで劇的にきれいになるという体験を数えきれないほどしてきました。
「鼻尖形成やシリコンプロテーゼの挿入で十分で、鼻中隔延長は必要ない」という意見をおっしゃるドクターも未だにいますが、前回までのお話でしてきたように、それぞれの手術で限界はあり、鼻中隔延長術を用いなければきれいにならない、鼻中隔延長を用いなければ太刀打ちできない鼻は確実に存在します。
とはいえ、手放しにこの手術を皆さんにお勧めしている訳ではありません。
鼻中隔延長をされたいと考えている方は、これからお話しする鼻中隔延長のデメリットやリスクを知っていただいた上で、するか否かを考えていただけたらと思います。
まず、この手術後に必ず起こることとして、鼻先が硬くなります。
当然、見た目にはわかりませんが、鼻中隔延長をすると、鼻の中心にしっかりとした柱ができるため、鼻先を押してもつぶせなくなります。
特に下方にしっかり伸ばしたケースでは、鼻先を上に向ける、つまりブタ鼻ができにくくなります。
鼻中隔延長の適応になる低く短い鼻の持ち主は、元々の鼻先が柔らかく、押すと簡単に鼻が潰れる方が多いので、この硬い状態になじむのに時間がかかるケースや、稀にどうしてもなじめないケースもあります。
また、右の鼻の穴と左の鼻の間に1枚もしくは2枚の軟骨が入ることによって、この部分が少し太くなります。
移植軟骨の位置や形状を工夫することで、外見的に鼻柱が太くなるのを防ぐ工夫はできますが、少なくとも鼻腔内では今までより太い部分ができます。
それによって、鼻腔もわずかに狭くなります。
鼻腔の入り口に近い部分が少し狭くなるだけなので、これだけで呼吸に影響することはほとんどありませんが、特に術直後は粘膜も腫れるので、それによる鼻閉症状が出る方が結構いらっしゃいます。
時間が経って腫れが引いてしまえば、大抵こういった症状は緩和しますが、中に大きく鼻から息を吸い込もうとしたときなどに今までより吸い込みにくい気がするといった症状を訴える方もいらっしゃいます。
それ以外でも、鼻中隔延長によって鼻が伸びるとその分皮膚が薄くなります。
鼻中隔延長では、延長軟骨と別に、鼻尖部に軟骨を追加で移植することがありますが、伸展により皮膚が徐々に薄くなってくると、この軟骨の形状が浮き出てくることがあります。(これは鼻尖形成でも起こりえます。)
最近は、こういった現象が起こるのを防ぐ対策として、浮き出ても不自然に見えないように、あらかじめ移植する軟骨の形状を工夫しています。
それでも極端に皮膚が薄くなった場合には、不自然に見えることもあります。
どうしても不自然に目立つ場合は、将来的にこの軟骨の一部を削る治療が必要になります。
もう一つのリスクとしては、術後に移植した軟骨が傾くことによって鼻先が曲がって見える可能性があることです。
一般に鼻先の皮膚は、ほかの部分の皮膚より厚く硬いのですが、鼻中隔延長ではこの皮膚を伸展させるため、一時的に皮膚がかなり緊張します。
これが、延長した鼻を押し戻そうとする力になります。
移植した軟骨の強度が弱いと、この押し返す力に負け変形してしまいます。
このような強度を考慮しない無理な延長を行わないことで、この現象は避けることができます。
実際、当院では、この手術を始めた初期のころに比べれば、この術後に変形する現象は圧倒的に少なくなりました。
でも、元々左右差がある鼻や鼻中隔が傾いているケースでは、どうしても多少の左右差が残ることはあります。
手術直後には緊張していた皮膚も、徐々に伸びることで緊張はなくなるので、術後6か月ほど曲がることなく無事に経過すれば、もう大丈夫と考えてよいと思いますが、例外もあります。
これは、自家組織を使わず、他人やブタの軟骨のみで鼻中隔延長を行っている場合です。
当院でも、患者さんの了承を得た上でこういった組織を利用する事はありますが、中心となる柱部分に使うことはなく、あくまで補助材料としての使用にとどめています。
具体的には、先ほどお話しした手術直後の鼻先の緊張する期間を乗り切るために、自家組織の強度の不足を補う目的で使用します。
では、なぜ中心となる部分に自家組織以外のものを使用しないのでしょうか?
自家組織以外の材料だけで鼻中隔延長を行えば、わざわざ自分の耳介軟骨などを採取する手間も無くなりますし、患者さんの負担も減ります。
それでもそうしないのには理由があります。
それは、一旦その部位に定着すればずっと形状を保ってくれる自家組織と違い、他人の軟骨やブタの軟骨は、1年後に同じ状態で残っていない可能性があるからです。
可能性といいましたが、実際、ブタの軟骨や他人の軟骨を使用している方の再手術の際などに、この状況を目の当たりにします。
例えば、もっと鼻を伸ばしたいとか、少し控えめに戻したいなどの理由で、術後半年以上経って再手術を行うと、自家組織はほとんど移植した当時の状態のままに残っていますが、それに対し、補助的に使用した自分以外の軟骨は吸収されて小さくなっていたり、ぐにゃぐにゃと表現していいくらい柔らかくなってしまっているケースを何度も経験しています。
他にも、ブタの軟骨だけで延長を行っているクリニックで手術した患者さんの中に、手術直後に比べ、だんだん鼻が短くなってきたとおっしゃる方がいらっしゃいます。
こういった方の再手術を当院で行うと、移植されているはずのブタ軟骨が委縮してしまっていたり、中にはわずかな痕跡を残すのみで、ほとんどなくなってしまっているというケースもありました。
自分の組織を採取しなくていいというのは魅力的ですが、それに伴うリスクを考えると、少なくとも私自身こういった手術を行うことはありませんし、受ける方もそのリスクを十分理解したうえで検討するべきだと思います。
最後にお話ししたリスクは少なくとも、避けようと思えば避けられるリスクですが、鼻中隔延長を検討している方はぜひ今日お話ししたそれ以外のリスクやデメリットについてもご自分なりにじっくり考えてみてください。

前回の最後に、同じ程度の結果でも鼻中隔延長と鼻尖形成では違うというお話をしました。
実際の現場では、鼻尖形成で出来ることをあえて鼻中隔延長で行うということはないと思います。
でももし仮にそういったことがあったとすると、この二つの術式の結果にどういった差が出来るのでしょうか?
そのことを説明するにあたり、見ていただきたい写真があります。
まったく同じ横顔の写真を、シミュレーションソフトを用いて一か所だけ変えてあります。
如何ですか?
二つの写真の違いが判りますか?
ちなみに、この二枚は鼻根も鼻背も鼻先も、高さはまったく同じです。

そうです。
よく見ていただければ、鼻の穴の形状が違っているのがわかりますね。
これが、今日のテーマの答えです。
鼻尖形成と鼻中隔延長の大きな違い、それは全体としては同じ高さでも、伸びる場所が違うということです。
もう少し具体的に言えば、鼻の穴の側が伸びるのか、その先が伸びるのかの違いです。
言い換えれば、鼻の穴の形が変わるのか変わらないかの違いです。
このことについてもう少し詳しく説明します。
鼻を下から見たイラストを見ていただくと、鼻先は鼻の穴のある部分とその先に大きく分かれます。
鼻尖形成では、先端部に耳介軟骨などを移植するため、Aの部分が伸びます。
それに対し、鼻中隔延長では前回説明したように、鼻中隔軟骨に別の軟骨をつぎ足すことでを鼻尖部を前方や下方に移動させます。
この時、鼻孔を形成する外鼻翼軟骨が伸ばした方向に一緒に移動します。
そのため、鼻中隔延長では基本的にはBの部分が伸びます。

その結果、鼻中隔延長を受けた方の鼻の穴は、元の鼻の穴より縦長になります。
鼻中隔延長では、延長したうえにさらに鼻尖部に耳介軟骨を置くことも多いので、その場合はAもBも伸びることになります。

これは非常に大切なことで、先ほどお話ししたケースのように鼻尖形成と鼻中隔延長で全体の高さや形状がほとんど一緒の場合でも、鼻尖形成のほうが重くモッタリした鼻先に見え、鼻中隔延長のほうがすっきり見えます。
それ以外にも違いはあります。
それをお伝えする前に、鼻の解剖について簡単にお話をさせてください。
ガイコツを見るとわかりますが、鼻先には骨はありません。
鼻根から鼻背までは鼻骨と呼ばれる骨がありますが、その先は大きく空洞が開いています。
実際の体では、この部分の骨格はすべて軟骨で支えられています。
特に鼻先は、大鼻翼軟骨と呼ばれる軟骨が鼻の穴を囲むように存在し、この部分の形態を支えています。


鼻尖形成のような、鼻先に軟骨を乗せるだけの手術では、この大鼻翼軟骨のフレームを動かすことなく単にその先にボリュームを加えています。
ですから、前方ならまだしも、下方にこの方法で鼻を伸ばそうとすると、その方向にとってつけたようなふくらみが出来てしまい、とても不自然に見えます。
これが鼻中隔延長では、延長させた鼻中隔軟骨の方向に鼻孔を形成する大外鼻翼軟骨を一緒に動かしていきます。
つまり、鼻中隔延長では、鼻の一部が伸びているというより、鼻中隔軟骨を延長させた方向に、鼻先の組織が一体となって移動していることになります。
ですから下方に伸ばした場合でも、自然な形態を再現できるのです。

ほかのクリニックでカウンセリングを受けてきた方の中に、そこのドクターから「鼻中隔延長は必要ない」、もしくは「鼻中隔延長じゃなくても同じようにできる」といった説明を受けたとおっしゃる方がいますが、このように、鼻中隔延長でなければできないことは確実に存在します。
それぞれの手術の特徴やメリット、デメリットなどすべて把握したうえで、なりたい自分になるのに何が必要なのか正確に把握したうえで手術に臨んでいただけるといいですね。
ということで、次回は鼻中隔延長のデメリットについて説明してみたいと思います。