
前回の最後に、同じ程度の結果でも鼻中隔延長と鼻尖形成では違うというお話をしました。
実際の現場では、鼻尖形成で出来ることをあえて鼻中隔延長で行うということはないと思います。
でももし仮にそういったことがあったとすると、この二つの術式の結果にどういった差が出来るのでしょうか?
そのことを説明するにあたり、見ていただきたい写真があります。
まったく同じ横顔の写真を、シミュレーションソフトを用いて一か所だけ変えてあります。
如何ですか?
二つの写真の違いが判りますか?
ちなみに、この二枚は鼻根も鼻背も鼻先も、高さはまったく同じです。

そうです。
よく見ていただければ、鼻の穴の形状が違っているのがわかりますね。
これが、今日のテーマの答えです。
鼻尖形成と鼻中隔延長の大きな違い、それは全体としては同じ高さでも、伸びる場所が違うということです。
もう少し具体的に言えば、鼻の穴の側が伸びるのか、その先が伸びるのかの違いです。
言い換えれば、鼻の穴の形が変わるのか変わらないかの違いです。
このことについてもう少し詳しく説明します。
鼻を下から見たイラストを見ていただくと、鼻先は鼻の穴のある部分とその先に大きく分かれます。
鼻尖形成では、先端部に耳介軟骨などを移植するため、Aの部分が伸びます。
それに対し、鼻中隔延長では前回説明したように、鼻中隔軟骨に別の軟骨をつぎ足すことでを鼻尖部を前方や下方に移動させます。
この時、鼻孔を形成する外鼻翼軟骨が伸ばした方向に一緒に移動します。
そのため、鼻中隔延長では基本的にはBの部分が伸びます。

その結果、鼻中隔延長を受けた方の鼻の穴は、元の鼻の穴より縦長になります。
鼻中隔延長では、延長したうえにさらに鼻尖部に耳介軟骨を置くことも多いので、その場合はAもBも伸びることになります。

これは非常に大切なことで、先ほどお話ししたケースのように鼻尖形成と鼻中隔延長で全体の高さや形状がほとんど一緒の場合でも、鼻尖形成のほうが重くモッタリした鼻先に見え、鼻中隔延長のほうがすっきり見えます。
それ以外にも違いはあります。
それをお伝えする前に、鼻の解剖について簡単にお話をさせてください。
ガイコツを見るとわかりますが、鼻先には骨はありません。
鼻根から鼻背までは鼻骨と呼ばれる骨がありますが、その先は大きく空洞が開いています。
実際の体では、この部分の骨格はすべて軟骨で支えられています。
特に鼻先は、大鼻翼軟骨と呼ばれる軟骨が鼻の穴を囲むように存在し、この部分の形態を支えています。


鼻尖形成のような、鼻先に軟骨を乗せるだけの手術では、この大鼻翼軟骨のフレームを動かすことなく単にその先にボリュームを加えています。
ですから、前方ならまだしも、下方にこの方法で鼻を伸ばそうとすると、その方向にとってつけたようなふくらみが出来てしまい、とても不自然に見えます。
これが鼻中隔延長では、延長させた鼻中隔軟骨の方向に鼻孔を形成する大外鼻翼軟骨を一緒に動かしていきます。
つまり、鼻中隔延長では、鼻の一部が伸びているというより、鼻中隔軟骨を延長させた方向に、鼻先の組織が一体となって移動していることになります。
ですから下方に伸ばした場合でも、自然な形態を再現できるのです。

ほかのクリニックでカウンセリングを受けてきた方の中に、そこのドクターから「鼻中隔延長は必要ない」、もしくは「鼻中隔延長じゃなくても同じようにできる」といった説明を受けたとおっしゃる方がいますが、このように、鼻中隔延長でなければできないことは確実に存在します。
それぞれの手術の特徴やメリット、デメリットなどすべて把握したうえで、なりたい自分になるのに何が必要なのか正確に把握したうえで手術に臨んでいただけるといいですね。
ということで、次回は鼻中隔延長のデメリットについて説明してみたいと思います。

クリニックでカウンセリングをしているとよく受ける質問の一つです。
今でこそ、一般的になった鼻中隔延長術ですが、ほんの10数年前までは、この手術はとてもマイナーな術式でした。
この手術を行っているクリニックも数えるほどしかなく、美容外科医の中にさえこの手術を知らない先生もたくさんいらっしゃいました。
実際、その当時の美容外科の教本の鼻の項目の中にも「鼻中隔延長」という言葉はおろか、それに近い手術の記載もありませんでした。
それというのも、この手術は今から20年ほど前に、当院の理事長である福田慶三先生が考案され、その後世界中に広まったものだからです。
当初は日本より韓国で一気に広まり、その後、日本のクリニックにも次第に広まってきました。
今では、鼻の手術を検討している方であれば、調べていくうちに必ずどこかでこの手術名を目にするほど、メジャーな手術になりました。
でも、それとともに、鼻中隔延長という手術名こそ同じでも、福田先生が考案された本来の術式と程遠い内容の手術や、かなりいい加減な手術も増えてきました。
特に、本来であれば鼻尖形成の範疇に入る手術を鼻中隔延長と称して行っているケースが目立ちます。
ですから、最初のコメントのように混乱する方が多くいらっしゃるんだと思います。
今回は、改めて鼻中隔延長とは何なのかを、できる限りわかりやすく説明してみたいと思います。
鼻中隔延長とはという話をする上で、鼻中隔という部分の構造をあらかじめ説明しておいたほうが良いと思うので、まず解剖学的な話をしたいと思います。
鼻中隔とは、簡単に言えば、鼻腔の内部を左右に仕切る壁です。奥の部分は鋤骨(じょこつ)、篩骨垂直板(しこつすいちょくばん)と呼ばれる骨でできていて、前方は鼻中隔軟骨と呼ばれる軟骨でできています。これが粘膜で覆われ、鼻孔から咽喉の奥まで伸びています。


左右の鼻の穴に指を入れて真ん中を触ると、動きはあるけれどもコリコリとしたやや硬い組織を粘膜越しに触れますが、これが鼻中隔軟骨です。
この軟骨は鼻の真ん中で鼻先の組織を支える柱のような役割を担っています。
鼻中隔延長とは、この鼻中隔軟骨に別の軟骨をつぎ足すことで、この柱を前方や下方に伸ばし、鼻尖全体の形を整える治療です。


それに対し、よく比較される鼻尖形成は、同じ軟骨を移植する治療でも、鼻中隔軟骨に連続せず、単に鼻先に軟骨を乗せてその形状を整える手術です。

これまでの話で、術式自体の違いは分かっていただけたと思うのですが、実際、それによってどういった差が出るのかを説明しようと思います。
これについては、言葉だけではその差が説明しづらいので、イメージしやすくなるように、たとえ話をしてみたいと思います。
以前に、横浜でマンションの建築ミスで、建物が傾いて問題になった事件がありましたね。
あの原因は、建物を支える地下の基礎の柱が十数メートルの深さにある地中の硬い岩盤に届いていなかったことだったと思います。
ここで考えてみてもらいたいのですが、普通の2階建てくらいの建物であれば、そんな深くまで基礎を作る必要はありませんし、簡単なプレハブ程度であれば基礎自体必要ありません。

(出典:家を高く売る.com)
今回は地上10階建て以上の大きなマンションであったため、その非常に重い躯体を支えるために基礎が強固な岩盤に届く必要があったわけです。

ここまでで、「何の関係があるの?」と思っている方も多いと思うのですが、もうちょっと我慢して聞いてください。
鼻先を伸ばすということは、それに対し、必ず押し返そうとする力が働きます。
この力は、皮膚の厚みや弾力によっても違ってきますが、基本的には伸ばす程度に比例して大きくなります。
軟骨を鼻先に乗せるだけの手術は、まったく基礎工事を行っていない地面に家を建てるようなものです。
あまり高さを欲張ってぶ厚い軟骨を移植すると、最初のうちは高さが出ていても、だんだん沈み込んできてそのうち最初よりかなり低くなってしまいます。
もちろん、鼻先を押し出す力も弱いので、10階建てのビルのような鼻先の延長は最初から不可能で、せいぜい平屋のプレハブ住宅を作るのが限界です。

それに対し、鼻中隔延長はいわば、地下にある丈夫な岩盤に基礎を打つような手術です。
思い出していただきたいのですが、鼻中隔軟骨はその奥にある骨につながっているので、けっして沈み込むことのない強固な岩盤のような組織です。
鼻中隔延長では、この岩盤の役割をする鼻中隔軟骨につなげる形で軟骨を移植するので、ちょっとやそっとの力では押し返されない丈夫な基礎が出来上がります。
ですから、単なる鼻尖形成では考えられないような、大きな変化が可能になります。
つまり、10階建てのビルの建築が可能になります。

この中間にあたるような術式もあります。
具体的に例を挙げると、例えば、鼻尖縮小という両側の大鼻翼軟骨を真ん中に寄せて鼻先を細くする手術がありますが、こうして寄せた鼻翼軟骨の上に耳介軟骨を乗せると、鼻翼軟骨で支えられることで、単に鼻先に耳介軟骨を乗せる時より沈み込みによる後戻りが生じにくくなるので、単純な鼻尖形成より大きな変化が可能になります。
いわば、大きなビルではないけれども三階建ての二世帯住宅なら大丈夫といった術式です。

いずれにせよ、鼻先を大きく変化させるためには、鼻中隔延長が最適であるということは間違いありません。
逆に言えば、希望する鼻がわずかな変化だけで出来るものであれば、鼻中隔延長までは必要なく、鼻尖形成と鼻尖縮小の組み合わせや、場合によっては鼻尖形成だけでも充分だということもあります。
ただし、厳密にいえば、同程度の変化を作る場合でも、鼻尖形成と鼻中隔延長の間には、決定的な違いがあります。
次回は、これについてお話をしたいと思います。

これをお話しする前にお断りしておきたいのは、あくまでこの理想的というのは明確な基準ではなく、私の主観を含んだものであるという事です。
以前にもお話ししたように鼻は他のパーツと比べても好き嫌いの好みが分かれやすい所なので、あくまで一つの考え方として聞いてください。
綺麗な四角形の鼻を考える上で大切なポイントがいくつかあります。

鼻先の位置があまり上や下にありすぎないことです。
具体的にどのくらいの高さが適当かというと、これももちろん絶対的なものではないのですが、鼻翼の真ん中よりちょっと下、つまり鼻の穴の上縁の延長線上よりちょっと上に鼻先の頂点があるのがいいと思います。

次に鼻柱の形ですが、口元の方から考えた場合、まず始まりは鼻下に対して90度くらい、つまり水平に近い形で前方に延びるのが理想です。
大切なのは口元からいきなり鼻先に向かわない事ですが、逆に水平より下向きになってしまうと垂れ鼻になってしまいます。
この部分の方向は、厳密に言えば鼻下の形でかなり基準が違ってくるのですが、水平よりちょっとだけ上向きというのがおおよその目安になると思います。
この水平に近い形で口元から立ち上がった鼻柱が真ん中くらいで角度を変え、先ほどお話した鼻先の頂点に向かうのが理想的な鼻柱の形です。
ここで、最近私が大切と考えているポイントが、この鼻柱の途中で角度を変える場所(屈曲点)の位置です。先ほどは真ん中ぐらいで角度を変えるといいました。確かにこれは一つの目安ではあるのですが、目指す鼻のタイプによって微妙に違ってきます。
つまり、「鼻先の高さが同じでも、この鼻柱の角度が変わる位置(屈曲点)がどこにあるかで鼻のイメージが変わる」ということです。

これを分かりやすく説明するために、鼻先から角度を変える位置(屈曲点)までをA、ここから口元までをBとします。
つまり真ん中で角度を変えればA=Bです。
鼻先の位置が同じ場合、Aが短ければ短いほど、言い換えればBが長ければ長いほどクールな印象の鼻になり、その逆にAが長ければ長いほどかわいい印象になります。


ちなみにこの二つのイラストで鼻先の高さは同じです。イラストで印象の違いがお分かりいただけますか?
鼻中隔延長をする際、このことをふまえて行わないと技術的に問題なくても目指すものと大きく異なった鼻になってしまいます。
実際、以前は鼻中隔延長の修正相談といえば
「他院で鼻中隔延長を受けたけど、あまり変わらなかったのでもっと伸ばして欲しい」という内容がほとんどでしたが、最近は
「鼻中隔延長を受けたけど、鼻がかわいくなくなくなったから戻したい。」といった相談が増えてきました。
この場合、手術自体は問題ない場合が多く、(逆に技術的にはきっちりとした鼻中隔延長が行われている、つまりドクターが頑張ってきっちりと延長している方にかぎってこういった問題が起こりやすい傾向があります) すべてを戻してしまう必要はまずありません。
多くの場合、鼻柱の前方の一部をほんの少し短くする、つまりBよりもAが長くなるようするだけで印象が劇的に変わります。
ほんのわずかな違いで大きく印象が変わってしまう。そんな経験をすると、美容外科は技術とセンスの両立が大切であるということをつくづく実感します。
“ 長い鼻下を短くするには?
「鼻下長」という言葉があります。
大辞泉という辞書を引くと「《鼻の下が長い意》女性に甘くだらしないこと。また、そういう男性。」と記載があり、良い意味ではありません。
鼻の下が長いからといって女性にだらしないということはないと思いますが、鼻の下が間延びしているとしまりがなく緊張感の無い顔に見えてしまいがちです。
老化によってもたるんで長くなってくる場所なので、老けた印象にも見えてしまいます。タレントさんの顔を見ると、この部分が間延びしている方の割合は非常に少ないように思います。
鼻下が長く見える理由には、実際の鼻下の長さが長いことや、鼻中隔(鼻の真ん中)が短い事などがあります。ですから、鼻下を短く見せるための治療法にも、実際の鼻下の長さを短くする手術や鼻中隔を伸ばすことで短く見せる治療など、その状態によって適応が分かれます。
鼻下を切って実際に短くする手術を上口唇短縮術といいます。
「人中短縮」と呼んでいるクリニックもあるようですが、人中というのは「鼻と口の間にある縦の溝」の事なので、鼻下全体を短くするこの手術の呼び名としては正確ではない気がします。
そういう意味では上口唇短縮という呼び名も唇の手術と紛らわしいので、「鼻下短縮」といった方が分かりやすいのかもしれません。


とにかく、鼻下に沿って皮膚を切り取る手術ですが、実際の手術法を簡単に図で説明するとこうなります。
この術後の傷はしばらくの間赤くなりますが、無理な手術をしない限りはかなり目立ちにくくなります。
一度に切除出来る量は縦の幅で4~8ミリくらいです。
皮膚だけでなく余分な筋肉までしっかり切除し口輪筋をリフトアップすることで、後戻りを防ぐ事が出来ます。
それでも傷が治癒していく過程で、傷の幅の分だけ少し戻りますので、実際の縮小サイズは切除した幅より1、2ミリ少ないと思ってください。

このデザインの限界として、鼻の幅の内側でしか皮膚の切除が出来ないことが挙げられます。
さらに、外側に向かうにつれ少しずつ切除する幅を狭めていかなければならないので、最大幅で切除できるのは鼻の幅の四分の三程度になります。
当然、鼻の幅が大きい方ほどたくさん切除できます。逆に鼻の幅が小さいのにたくさん切除しようとすると、縫合する際の上下のつじつまが合わせづらくなり、その結果、傷跡が目立ってしまうことになります。

年配の方は口の外側まで全体にゆるんで間延びしている場合が多く、このデザインでは短縮に限界があります。
この場合、法令線のしわを利用して鼻の外側までデザインを広げなす。
これによってさらにたくさんの皮膚切除が可能になります。

若い方でも、一度に大きく変化させたい方にはこのデザインの方が有利です。
でも、法令線にくっきりしたしわが無い方がこのデザインで切開すると傷が目立つので、基本的にはお勧めはしません。
この手術の適応を考える上で大切なのが、唇の変化です。鼻下全体が上に引っ張られるため、その結果、上唇が厚くなります。鼻下の長い方の多くは唇が薄いため(特に加齢で伸びた方はほぼ全員)、ほとんどの方にとってこれは嬉しい変化なのですが、唇が元々厚くそれ以上厚くしたくない方には、この手術は適応になりません。
もう一つは、今までより口が閉じにくくなる事です。元々、あごが小さい方などで口が開きやすい方は、さらに開きやすくなるので要注意です。さらに、笑ったときに今までより歯茎が見えやすくなります。つまりガミースマイルになる可能性があります。加齢で鼻下が伸びて長く見える方はそれ程心配はいりませんが、上あごの骨格そのものが長い方がこの手術を行うとガミーになる可能性が結構あります。ですから、術前からガミースマイルの方は論外で、どちらかといえば禁忌です。
もう一つは鼻の形を変えるという方法です。


元々鼻下が長く見える理由の一つに、鼻の真ん中(鼻柱)が短いという事があります。
正面から鼻を見て、鼻翼(小鼻)の下端より真ん中が短く上にある方はまさにこのタイプです。
こういった方は鼻中隔延長という手術で鼻柱を下げることによって、鼻下が短く見えるようになります。

鼻中隔延長というのは、軟骨を鼻中隔に移植することで鼻の真ん中を下方や前方に伸ばす手術です。
この時、気をつけなければいけないのがその下げ方です。鼻柱の付け根から鼻先までバランス良く下ろさないと、特に横顔での鼻の形が悪くなってしまいます。
もう少し具体的にお話しすると、鼻先側だけが下がると鉤鼻になってしまいますし、付け根の方だけが下がるとアップノーズに見えてしまいます。
鼻柱が鼻翼(小鼻)より下に来るようにしながらこの形を作ると良い雰囲気になると思います。
この手術は当然、元々鼻の真ん中が長い方には適応になりません。このタイプの方が鼻柱を下に伸ばすと、正面から見たときアローノーズと呼ばれるの矢印ような鼻になってしまいます。(中には矢印鼻がお好きな方もいらっしゃいますので絶対禁忌とは言えませんが)
鼻下を短く見せるもう一つの方法は、上唇を厚くすることです。
実は、この方法では実際の鼻下の長さは短くなりません。ではどうして短く見せる効果があると言えるのでしょうか。
これを説明するために、一つの例を先に挙げようと思います。今、周囲に、はがきなどの幅のあるものがあったら手に取ってみてください(手帳などでも構いません。)。これを正面から見たときと少し傾けて見た場合では、傾けたときの方が幅が狭く違見えますよね(当たり前ですが)。


上唇を厚くするのにもこれと同じような結果になると考えています。
ヒアルロン酸などで厚くした上唇を横から見ると、唇がちょっと斜め前方に持ち上がっています。
これによって鼻下の角度が少し傾きます。これが正面から見た鼻下を短く見せることにつながります。
ただし、実際の鼻下の長さが変わっているわけではないので、顔を傾けて見た場合などにはあまり変わったという印象になりません。でも、上唇が厚くなる事で相対的に鼻下が短く見えることもあるので、この場合にもまったく変化がないとは言えないと思います。
その方のご状態によって治療の適応は変わります。
もちろん、さらに変化をつけるために二つの治療を組み合わせることもあります。
比較的コンピューターのシミュレーションでイメージを作りやすい部分なので、治療を迷われている方は一度シミュレーションをされてみると良いかと思います。
“ 頬骨セットバック-008 額美人を目指すには? PART1~額は顔全体のバランスを良くする美人の条件の一つに額が美しいことが挙げられます。
額が狭いとなんとなく貧弱な印象に見えてしまいます。なめらかさが無く凸凹した額や、眉骨(眉の部分の骨)部分だけが突出して見える額も、武骨な印象を人に与えてしまいます。
適度に広くふっくらとした額は、顔に立体感を出すとともに顔全体の輪郭のバランスを良くします。この、「適度に」という部分が以外と大切で、あまりふっくらと丸過ぎてもただのデコッパチに見えてしまいます。
広さについても、広いだけでいいのであれば生え際が後退するのでもよさそうなものですが、それでは美しい額にはなりません。(実際の脱毛して額を広く見せようとされていた方がいらっしゃいましたが、かなり違和感がありました。)理想的な額は、横から見るとかなり垂直に近い角度をしています。つまりふっくらと立った形をしています。

額にはその中ほどの高さで正中の左右に「前頭結節」と呼ばれる隆起があり、ここが額では最も突出した部分になります。

この前頭結節の隆起に乏しいと、平面的で寝た額になってしまいます。実際に、額が狭く貧弱に見える方にはこのタイプが非常に多いようです。
眉骨の突出が目立つタイプの中にも、眉骨の上、つまり前頭結節の隆起が乏しいタイプがかなりいらっしゃいます。
「左右にふくらみがある」というのも大事で、これによって額の中ほどに適度な広さのふっくらとした面ができます。
額の形成術というのは、言いかえればこの適度に立った前頭結節のふくらみを作る手術とも言えます。
もちろんそれ以外にも、ちょっとした段差をなめらかにする目的や、眉骨の部分から全体に額を出すことで彫を深くする目的などにも行われます。
額形成の目的を大まかに分けると、

眉骨や眉間と額の間に出来る段差や左右の前頭結節の間の凹みをなだらかにする。

面全体として適度なふくらみを作ることで、立体感のある立った額にする。

眉骨から額全体にかけ全体的に前方に出すことによって、彫の深い西洋人的な輪郭にする。
の3つになり、それぞれで選択される術式も異なってきます。
特に3については、額のみの手術で終わることは少なく、これに眉間や鼻を高くしたり二重を広くする事を加えることで、いわゆる「西洋人顔手術」というちょっと特殊な手術になります。
つづきは「額美人を目指すには? PART2~額形成の目的と材料」へ
“ 額美人を目指すには? PART2~額形成の目的と材料
今回は、額を作る材料についてお話してみたいと思います。
額を作る素材としては、
があります。
1のフィラーと2の脂肪は注射で注入して額を膨らませる治療です。手軽な治療ですが、面としてふっくらとした立体感を出すには限界があります。
それに、額は元々皮下脂肪や筋肉の層が薄くすぐ骨になる場所なので、柔らかい素材であまり厚みをつけすぎると、触った感じも不自然です。
ですから、こういった素材は軽度の段差を埋めてたり、額の中心にちょっとした丸みをつける程度の治療に向いています。
3のシリコンは、隆鼻術や顎の形成術では良く使用される素材で、額にも以前は良く使用されていました。
手術方法は、頭皮内を数センチ切開し、そこから額の骨膜下にスペースを作ってシリコンプロテーゼを入れるというシンプルなものです。
局所麻酔でも可能で、プロテーゼも既成のものがあり、傷も小さく目立たないので意外と手軽な手術ですが、最近は行っていません。
理由としては、時間が経ってくると周囲にカプセルを作り、これによってシリコンの辺縁がくっきりし目立ってくることが挙げられます。それ以外にも、額が丸くなりすぎてデコッパチに見えやすいという事があります。
前回お話ししたように、美しい額には前頭結節の適度なふくらみが左右にあり、これによって額の中ほどに適度な広さのふっくらとした面ができます。この適度な広さがシリコンでは表現しにくく、真ん中が突出して見えやすくなりがちです。
4のゴアテックスは、最近鼻の手術でシリコンの代わりに使う事が増えてきている素材です。
この素材は、布のように非常に軟らかい上に人体との親和性に優れているため、医療用としては、美容外科はもちろんのこと、人工血管や心臓のパッチや脳を包む硬膜の修復に用いられています。
シリコンと違いカプセルを作らないため、将来的に辺縁が際立つ心配がほとんどありません。
ただし、柔らかくあまり厚みのない素材ですので、西洋人顔手術のような広い範囲で立体的な額を作る治療には向いていません。
切開は、シリコンのように頭皮内を切開する場合もありますが、素材が軟らかいので眉に沿った小さな切開でも挿入可能です。
5の骨セメントと6のハイドロキシアパタイトは共にペースト状の状態から徐々に硬化し硬くなる素材です。固まってしまうと骨と同等の硬さになるため、額の骨に近い素材と言えます。
骨セメントはPMMA(ポリメタクリル酸メチル)とよばれるアクリル樹脂です。主に整形外科領域で、人工股関節の固定などに用いられてきました。最近では、脊椎の圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術の材料として用いられることが多くなっています。
半世紀ほどの歴史のある信頼性がある素材ですが、整形外科でそういった手術に用いられた場合、骨髄に付着すると一時的な血圧低下やショックなどの合併症が起こる可能性があります。ただし、額形成では骨髄が露出する事がなく、そのため骨セメントと骨髄が接触する可能性がほとんどないためまず大丈夫であると考えています。(もちろん、不測の事態に対処できる万全の態勢を整えて手術には望んでいます。)
骨セメントの欠点は硬化する際の発熱です。建設材料であるセメントも固まる時には発熱しますが、それと同様にこの骨セメントも粉末と溶解液を混ぜてペースト状にしたものが固まっていく過程で発熱します。
そのため、頭皮を大きく剥離して額の骨を露出させた上でないと皮膚が火傷を起こしてしまいます。この頭皮を大きく剥離する手術のためには、頭頂部の近くで頭皮を冠状に大きく切開する必要があり、手術がかなり大がかりなものになってしまいます。この発熱は数分で収まりますが、その間は氷水などで冷やして周囲に熱が及ばないように注意する必要があります。
確かに手術自体は多少大がかりと言わざる負えませんが、術後については腫れもそれほどなく、傷も後ろにあるため目立ちにくく、拍子抜けするくらいスムーズです。
ハイドロキシアパタイト(HAP)は、リン酸カルシウムからできています。リン酸カルシウムは脊椎動物の歯や骨を構成する主成分であり、そのためこのハイドロキシアパタイトの人工骨は本物の骨に近いといえます。そのため生体になじみやすく、異常反応の心配もありません。
骨セメントと違い硬化の際に発熱しないため、小さい切開創から額の骨膜下を剥離し、できた空間に流し込むような使い方ができます。ただしこの方法は、流し込んだハイドロキシアパタイトが硬化するまでの間、皮膚の外から押しながら形を作ってく必要があります。これが非常に難しく、油断すると額に凸凹や波打ちが出来てしまいます。もちろんこれは細心の注意を払って行う事である程度避けられますが、大きな面になる程、均一でなだらかな額の面を作るのが困難になってきます。それに基本的に一発勝負であり、一旦固まってしまうと修正が非常に難しくなります。
そのため額全体の大きな形成には向かず、額の中心をふっくらとさせるような中程度の額形成に向いていると言えます。
もちろん、このハイドロキシアパタイトを先ほど骨セメントで説明した額の骨を大きく露出させる術式の際にも使用できます。この術式であれば、固まった後に余分な部分を少し削ったり、逆に足りないところを足したりという事が簡単にできるので、まさに彫刻の要領で額を作ることが出来ます。特に、額全体を大きく変化させる手術や眉骨から形を作らなければいけない西洋人顔手術では、この術式でないと厳しいと思います。
でも、このハイドロキシアパタイトは原価が非常に高いため、こういった大量に材料を消費しなければならない手術では、骨セメントと比べ大きな価格差が出てしまいます。例えば、額全体をふっくらさせようとすると、約20cc前後のボリュームが必要になってきますが、これを骨セメントで行った場合とハイドロキシアパタイトで行った場合では、材料の原価で40万円程差が出ます。この原価の差の分だけは追加の費用をいただかざる負えないので、その分は手術を受けられる方の負担になってしまいます。
この二つの素材は、硬さや耐久性などに差は無く、皮膚で覆われてしまえば見た目の差もありません。
という事は、その差は額の中にプラスチックの一種であるアクリル樹脂ではなく、骨とほぼ同じ成分であるリン酸カルシウムの塊が入ってるという満足度くらいかもしれません。
前回は額形成についてお話してきましたが、ここでそれぞれの術式と使用する材料の関係について少し整理してみましょう。

額形成の目的は、その程度によって大きく分けると
の3つがあります。

それぞれ目的に対してどんな材料を用いた治療が一番合っているのかを分かりやすくするために、表を作ってみました。
ちなみに目的と治療内容のバランスが良いものを◎、適応はあるがそのために必要な手術が大きすぎてバランスがやや悪いものを〇、さらにバランスや治療結果が悪いものを△、適応が無いと考えられるものを☓としました。
この表に少し説明を加えると、例えば、骨セメントを用いた手術を行うためには頭頂部の近くで頭皮を冠状に大きく切開する必要があるため、西洋人顔手術のような大きな額形成には向いていますが、額の中心に丸みをもたせるだけの治療には適応はあってもやや大きすぎてバランスが悪く、ましてやちょっとした段差を埋めるだけの治療に対してとなると他の治療を選択すべきということです。
もし額の治療を考えていらっしゃる方は参考にしてください。

「フェイスラインを小顔にしたいけど、何をすれば小さくなるのか判らない」
そうおっしゃる方は少なくありません。例えば、正面からみた頬のフェイスラインを小さくしようとした場合、当然その部分のボリュームを減らすことを考えると思うのですが、何を減らすかついてはいくつかの選択肢があります。
具体的には、脂肪、筋肉(咬筋)、骨(エラの骨=下顎角)の3つになります。本当はこれに皮膚自体のたるみというファクターを加えなければならないのですが、この後の話を単純化するため、今回はあえてこれを外した3つについてお話ししていきたいと思います。
では、どんなタイプにどんな治療が向いているのでしょうか?これを考える上では、頬のフェイスラインの解剖学的な構造を理解する必要があります。
そこで、今回はCT(コンピュータ断層撮影)画像を利用して、これを確認してみようと思います。体の内部の構造を確認するのにCTは非常に有用です。特に最近は水平だけでなく様々な角度の切断面を見ることができるので、とても助かります。

今回は、水平と垂直の両方のスライスで見ていきましょう。まず、エラの角(下顎角)の高さの水平の断面を見てみましょう。
矢印で示す場所がそれぞれ脂肪、咬筋、エラ骨です。
CTでは、骨は白く、筋肉はグレー、脂肪は黒っぽく写ります。

さらにそれぞれをわかりやすくするため、色分けしてみました。
フェイスラインのボリュームに影響しているものが、前と後ろでは違う事が解ります。
つまり、前から真ん中くらいまでは脂肪、真ん中より後ろになると咬筋、一番後ろの方はエラ骨(下顎角)がフェイスラインに影響しています。

今度は、前方、中間、後方の垂直断面を見てみましょう。
前方では頬全体で脂肪が占める割合が大きいことが解ります。

ここから後方にいくに従って、脂肪が減り咬筋のボリュームが増えてきます。
もう少し後方になると脂肪層が非常に薄くなり、咬筋の占める割合が大きくなります。

一番後方のレベルでは、特に下の方で咬筋より骨の影響が大きくなりことが解ります。

つまり、
適応があるという事になります。
ご自分がどのタイプか見分けるためには、正面から見たフェイスラインの輪郭が前方から後方までのどのレベルで構成されているかをチェックする必要があります。
つまり、鏡で正面の顔を見て、一番外にある部分がどこかということです。これを簡単にチェック法できる方法があります。
鏡を見ながら人差し指の指先で後ろの方から前に向かって頬をなぞっていって、どこで指先が見えるかを調べる方法です。(強く押さずそっとなぞるようにするのがポイントです。)指先が見えたところがフェイスラインのピークという事になるので、指先が最初から見えるようであれば骨、その少し前であれば咬筋、真ん中くらいでやっと見えてくるようであれば脂肪を減らすことがその方の小顔治療の第一選択になります。
単純ですがこれはとても大切なポイントで、この選択の順序を間違えると治療が逆効果になってしまうことや必要ない手術をすることになりかねません。例えば、後方にフェイスラインのピークがあるのに頬の脂肪吸引を先にしてしまうと、頬の前方だけがこけて却ってエラが張って見えたりします。逆に、正面から見てエラのある後方部分がその前のボリュームに隠れて見えないような方が、頑張って骨を削る手術をしても、少なくとも正面から見た顔はあまり小さくなりません。他にも、最後方ではなく、その少し前方にフェイスラインのピークがあるのであれば、骨を削らなくてもボツリヌス菌だけで小顔を目指せる可能性が高いと言えます。
小顔治療を考えている方は、是非一度鏡の前でチェックしてみてください。
つづきは「何を減らせば小顔に見える? PART2~頬の小顔治療」へ
” 何を減らせば小顔に見える? PART2~頬の小顔治療
頬の小顔治療で最も手軽なのはボツリヌス菌注射です。ボツリヌス菌を注射すると咬筋が委縮し小さくなるという治療ですが、ボツリヌス菌自体には直接筋肉を小さくする効果はありません。
既にご存じな方も多いとは思いますが、ここで改めてボツリヌス菌で筋肉が委縮する原理をお話しします。ボツリヌス菌が産生する毒素から作られる薬剤ですが、この薬剤には筋肉を弛緩させる(ゆるんだ状態にする)ことを目的としています。この作用の原理を専門的に説明すると、「神経筋接合部でアセチルコリンの放出を妨げる事によって神経終末における神経伝達を阻害し、筋肉を弛緩させる。」という事になります。
もう少し簡単に言えば、咬筋にボツリヌス菌を注入すると、神経を伝ってやってきた「咬筋を動かしなさい」という脳からの指令が筋肉に伝わらなくなり、これによってボツリヌス菌が効いている咬筋が動かなくなるという事です。動かなくなったからといって咬筋がいきなり小さくなるわけではありませんが、筋肉は使わないと徐々に衰えて委縮してきます。これは、病気や交通事故などで数週間ベッド上生活を続けるだけで足が非常に細くなってしまう事などでも分かります。
つまり、ボツリヌス菌は「筋肉の動きを弱めることで、筋肉を衰えさせて委縮させる薬剤」です。ですから、ボツリヌス菌を注射して顔が小さくなったと確認できるまでに1カ月ほどのタイムラグがあります。
これとは逆にボツリヌス菌の薬剤としての効果が消えたからといって、いきなり顔は元の大きさには戻りません。ボツリヌス菌の効果は6カ月ほど続くのですが、効果が切れて筋肉が動き出すことによってそこから1カ月くらいかけて徐々にボリュームが戻ってきます。つまり、ボツリヌス菌の効き始めと効果の消失にそれぞれタイムラグがあります。ということは、良い状態で維持していこうとすれば、完全に戻ってから再注入するのでは遅いということになります。ボツリヌス菌の効果が切れると、まだ筋肉自体のボリュームは戻っていなくても、奥歯で噛みしめた時に咬筋の動きが大きく感じられるようになります。このタイミングでボツリヌス菌を注入すると、頬のサイズが元に戻ることなく維持できます。

前回お見せしたCT画像を見ていただくと分かりますが、咬筋は顔の筋肉の中では、側頭筋などと並んで最もボリュームの大きな筋肉の一つです。
ですから、このボツリヌス菌注入は手軽な割に多くの方に効果が表れやすい治療です。
特に、エラの骨(下顎角)がそれほど外に張りだしていないにもかかわらず後方のフェイスラインが大きい方、奥歯を強く噛みしめると顔がホームベース型に見えるタイプ方などは咬筋のボリュームが非常に大きいため、ボツリヌス菌のみでも効果があります。
もう一つ、ボツリヌス菌という薬剤の注意点をお話しすると、ボツリヌス菌はあくまで神経筋接合部という神経の終末に働くため、咬筋全体の動きを一度に止めてしまうものではないという事があります。ですから、ボツリヌス菌が効いているからといって全く咬筋が動かなくなるということはありません。
特に咬筋の大きな方は、一回のボツリヌス菌注入で動かなくできる筋肉量にも限界があります。ある程度までは注入するボツリヌス菌の量に依存して効果も上がりますが、ある一定レベルを超えるとそれ以上は一度にたくさん注入したからと言って効果に差が出なくなります。
実際ヴェリテクリニックでは咬筋にボツリヌス菌を注入する際、100単位というかなり多い量を一度に注入していますが、これでもすべての方で全く咬筋が動かなくなるレベルではありません。
最近は、こういった咬筋のボリュームが大きい方に対して、時間差でボツリヌス菌を注入するという治療を行っています。ボツリヌス菌の効果がまだ十分残っている時期(3か月目くらい)に次の注入を行うことで事でさらなる委縮を目指せます。
もう一つの咬筋に対する治療に筋肉を切除する治療、つまり咬筋切除があります。
口腔内からアプローチし、咬筋を直接切って取り除く術式です。エラの骨切りの際に一緒に行う事が多い治療ですが、単独で行う事もあります。
ボツリヌス菌のように繰り返す必要が無いという点では優位な治療ですが、欠点もあります。

筋肉は、藁束のように筋繊維が束状になって出来ています。
咬筋切除では、咬筋をすべて取ってしまう事は無く、藁束から藁を抜き取っていくように少しずつ間引くように切除していきます。
この時、偏った取り方をしてしまったり、皮膚表面に近い筋肉を大きく間引いてしまうと、フェイスラインが不自然に見えたり、奥歯をかみしめた時などに皮膚表面に不自然な凹凸が出来てしまいます。
自然な形態に見えるように細心の注意を払って切除しても、残った筋肉が再度発達する事によって次第に凸凹になってきたりする可能性もあります。そういう意味ではとても厄介な治療です。
また、近くに顔面神経の下顎縁枝という口元を下方に動かす神経が走行しているため、乱暴に咬筋を切除をするとこれを損傷する可能性があります。
もちろん丁寧な手術を行えば直接損傷することはありませんが、神経は非常にデリケートなので咬筋を引っ張るだけでも一時的に麻痺してしまう可能性があります。
最近はボツリヌス菌治療だけでも繰り返していけば、だんだん戻りにくい状態になって持続するので、リスクを考えると咬筋に対する治療はボツリヌス菌を続けるのが無難かもしれません。
小顔に見えるポイントの一つが輪郭のなめらかさであるというお話をしたことがあると思います。ごつごつした骨格や凸凹した輪郭は実際の大きさ以上に顔を大きく見せます。逆にスムースなフェイスラインは顔を小さく見せます。
そういう意味では、バランスを考えずに部分的にフェイスラインのボリュームを減らすことで、却って顔が大きく見えてしまう事もありえるという事です。
頬でこのような事がもっとも起こ易いのが、脂肪吸引に代表される脂肪のボリュームを減らす治療です。

これを考えるために顔の骨格に注目してみましょう。(サカモト君に登場してもらいます。)
PART1で脂肪が最も多いのは、頬のやや前方であるというお話をしました。骸骨を見ると分かるのですが、この部分は骨格の構造としては最も凹んでいる場所の一つです。
同じように凹んでいる場所にこめかみがありますが、実際、両方とも病気や加齢でやつれてくると凹んできやすい場所です。

頬の真ん中はどうして骨格的に凹んでいるのでしょうか。
これはこの部分が、頬骨と下顎角(エラ)とオトガイ(顎)という三つの隆起した骨に囲まれているからです。

つまり、この頬の中心部は三つの山に囲まれた盆地のような場所という事になります。
この盆地を軟部組織と呼ばれる脂肪や筋肉で埋めているわけです。埋めるものが少なければ、当然実際の頬も凹んで見えます。
軟部組織の量がそれなりにあっても、それ以上にこの三つの山が高ければ結果として凹んで見えることもあります。
女性より男性に頬がこけて見える方が多いのは、骨格がしっかりしている、つまり三つの山が高いことに起因していると言って良いと思います。
軟部組織の中でも、特に脂肪が多い方はこの盆地が平野を通り越して丘になります。
脂肪吸引の適応となるのはこのタイプです。こういった方でも、吸引することで小顔に見えるのは丘が平野になるところまでです。それ以上に脂肪を吸引しすぎで凹んでしまうと、その結果、周りの山が目立ってしまうことになります。
つまり頬骨やエラが却って大きく見えてしまいます。輪郭的にもなめらかさが無くなり、ごつごつとした印象に見えてしまうため、始めにお話しした通り効果が半減してしまいます。
脂肪吸引の適応の有無を見分ける簡単な方法があります。

これは、まず頬骨の真ん中と下顎角(エラ)とオトガイの角を結んだ三角形で出来る面をイメージします。この面から頬が明らかに外側にはみ出している方は、脂肪吸引の良い適応になります。
はみ出していない方が脂肪吸引を行うと、頬が窪んでしまいます。下半分ははみ出しているけど上半分ははみ出していないという方であれば、下側だけ吸引する方が無難です。(上半分、つまり頬骨のすぐ下の脂肪を吸引することで頬骨の張り出しが目立ってしまう事は少なくありません。)
多少凹むくらいは顔がシャープに見えて良いという考え方もありますが、頬は年齢とともにこけて老け顔になる方が多いため、吸引しすぎると将来的に困るかもしれません。