
アンチエイジング治療は美容外科医にとってとても重要な仕事の一つです。
実際、美容外科におけるアンチエイジング治療の占める割合は、年々増加の一途をたどっていると思います。
その理由の一つには、選択できる治療内容が増えたことが挙げられます。以前はフェイスリフトや上眼瞼のたるみ取りといった切る治療しか選択の余地が無かったものが、最近では糸を入れるだけの治療や全く切らない治療など、様々な選択ができるようになりました。
ただしそれだけに、それぞれの治療のメリット、デメリットをしっかり見極めて、もっとも自分の目的や環境に合った治療を、自分自身の判断で決めることが今まで以上に大切な時代になったと思います。そういう訳で、その判断の材料になってくれるといいかなというお話を少ししてみたいと思います。
まず、アンチエイジングという言葉からみなさんが想像する日本語は何でしょうか?
医学的には「抗加齢」と訳されることが多いのですが、一般的には「若返り」の方がピンとくるのではないかと思います。
「返る」という言葉で表現されるように、アンチエイジングには「今の状態を昔の状態に戻す」というイメージがあります。もちろんこれは間違いではありませんし、実際ほとんどの方がそれを望まれます。
でも、この「戻る」ことだけがアンチエイジングなのでしょうか?
「今すぐに若返りたい」、「昔の自分に戻りたい」という方にとっては、当然「戻る」治療しか方法は無いと思います。
でも、「実年齢より少し若く見られたい」、「同世代の方より若くありたい」、それも少し時間をかけてもいいという方であれば、「戻る」ばかりが治療ではありません。
これは、ゆっくり年をとるという考え方です。
そういう意味では、「アンチエイジング」というより「スローエイジング」といった方が正しい表現かもしれません。 例えば、40歳の方がその後の10年間、同世代の方の半分のスピードでしか老化が進行しなければ、同級生より5歳若く見えます。さらに10年経てば10歳若くなります。 60歳の方がいきなり10歳若返ろうとすれば、かなり頑張っていろんな手術をしないと難しいと思います。 でも、加齢のスピードをゆるやかにするのは、手術より手軽な治療や日々のちょっとしたお手入れを根気よく続けるだけでなんとかなります。 これが「スローエイジング」の基本的な考え方です。 エイジング(加齢)というのは河の流れを小舟で下って行くのに似ています。 その流れ自体を止めることはできませんし、どんなに頑張ってオールを漕いで上流に戻っても、いずれは元いた場所に再びたどりついてしまいます。 でも、流れに逆流するほど頑張って漕がなくても、ちょっと流れと逆らうように漕ぐだけで、流れに身をゆだねきっている人よりも上流に留まっていることはできます。 逆に、短時間で大きく戻ろうとしたり、流れに逆らって同じ場所で留まろうとすれば、加齢とともにかなり無理な治療が必要になってきますし、それでも不可能なことが徐々に出てきて、それが精神的にもストレスになってきます。 とは言っても、「戻る」という要素が全くないのもさびしい話です。 昔、大原麗子さんの出演していたウイスキーのCMに、「少し愛して長く愛して」というコピーがありました。(古いですね) 其れにちょっと似ているのですが、頑張りすぎないアンチエイジングのコツは「少し戻って、長く保って」というイメージでしょうか。 つまり「アンチエイジング」と「スローエイジング」を上手に組み合わせていくことで、無理せずいつまでも若々しくという事です。” 眼瞼下垂-073 超音波は強い味方!?
先日、よく行くバーでたまに見かける男性から、奥さんが妊娠中であるという話をお聞きしました。
「予定日が近いので飲んでいても落ち着かない」
と言いながら結構な量のお酒を飲んでいましたが、その際スマホに保存してある胎児の超音波(エコー)写真を見せていただきました。
私が研修医時代に産婦人科をローテートしていた際には、外来で毎日のようにエコー検査をさせられていましたが、その時代のものよりかなり機械が良くなっていて、赤ちゃんの表情が分かるくらい鮮明でした。
本当に嬉しそうにその写真を眺めている彼を見ながら、外来でエコーの画像を妊婦さんにお見せすると、みなさん本当に嬉しそうな表情をされていたことを思い出しました。
そして、エコー検査って本当に優れた検査法だなとあらためて実感しました。
せっかくなのでこの検査のどこが優れているのかをお話ししてみたいと思います。
今日は美容に関係ない話なのかなと思っていらっしゃる方は、ご安心ください。
後で必ず関係してきますので、ちょっと我慢してお付き合いください。
超音波は人間の耳には聞こえない高い周波数の音波で、一定方向に強く放射され直進性が高いという性質があります。
これを利用して体内に向かって超音波を発信し、そこから返ってくるエコー(反射波)を受信し、コンピュータ処理で画像化して診断するのが超音波(エコー)検査です。
この検査はX線検査のように放射線被爆の心配がなく、検査を受ける人の苦痛もなく安全です。
そのため、先ほどのお話のように、胎児の診察にも用いられています。
さらに良いのは、機械がコンパクトで持ち運びも簡単なことです。
最近は、ちょっと大きめのスマホぐらいのハンディーサイズまで存在します。
こんな簡便で小さく安全なのに、体のごく浅い層から奥深くまで調べられるのですから、本当にありがたい機械です。
もちろん、欠点がないわけではなく、脳などの骨に覆われた組織は原則見ることができませんし、肺などの空気の多い部分を調べるのも苦手です。
それでも、血管や心臓、肝臓や腎臓といった腹部の臓器から手足の筋肉や乳房にいたるまで、体のかなりの部分を検査できる優れものです。
ここからが本題ですが、じつは私のホームグラウンドであるヴェリテクリニック名古屋にも超音波検査機があります。
ハンディータイプとはいかず、サイズはやや大きめですが、その分充実した機能を兼ね備えています。
「美容外科でどうしてエコーが必要なの?」
と思われる方は少なくないと思いますし、実際この機会を置いている美容外科は少ないと思います。
でも、これが意外に役立っています。
もちろん、心臓や内臓の検査をすることはありません。
美容外科は、見た目を変える治療を行っている科ですので、もっと体の浅い部分をこれで調べています。
具体的にいえば、皮膚や、皮下脂肪、筋肉、そしてそこに注入された異物などです。
用いるプローブ(探触子:超音波を発する装置)も、体表に近いところを調べる専用のものを用います。
ちなみにこれは顔をエコーで調べている写真ですが、このように調べたい部分にセリーを塗ってプローブを当てるだけなので本当に手軽です。

では、具体的に例をあげていきます。
一つは、乳房の検査です。
乳房といっても、乳がんの検査ではなく、主に豊胸に関連した検査です。
これだけでも、かなりいろいろな状況で使えます。
ざっと羅列するとこんな感じです。
1.豊胸術の術式(乳腺下、筋膜下、大胸筋下)の適応を判断する材料として、エコーで皮下脂肪や乳腺、大胸筋の厚みを計測する。
2.被膜拘縮(豊胸術の術後にバストが硬くなる反応)の程度や状態を評価
3.脂肪注入やヒアルロン酸注入後にできるしこりの有無やサイズ、個数の評価
4.人工乳腺の破損や劣化の有無のチェック
まだまだありますが、ここに挙げたものだけでも、エコー有るのと無いのでは、その後の治療に対する安心感が大きく変わってくると思います。
では、具体的な画像を見てみましょう。
まずは人工乳腺による豊胸術(シリコンバッグ豊胸)の術後エコーです。
ちなみに、エコーの見方について簡単に説明しておくと、上が表面側で下に行くほど深い層になります。
今回出てくる画像では、左横にでているメモリ(小さい点)一つが1センチになります。
黒いおおきな塊が人工乳腺(バック)です。
その上方に見える黒と白の線がシェル(シリコンを包む袋)と被膜になります。
この画像では、この線が薄く非常になめらかですので、正常な状態と診断できます。
被膜拘縮を起こした症例では、この部分が厚くそしてグニャグニャと波打ったように見えます。

次は、ヒアルロン酸による豊胸術の画像です。
たくさんの黒く抜けた塊が確認できると思いますが、これがすべてヒアルロン酸の入っているところです。
この方は、他院で注入されたヒアルロン酸を取られたいと御相談にいらっしゃいました。
この場合にも、エコーがあれば、画像で確認しながらヒアルロン酸を安全に抜き取ることができます。
実際、この方については、エコーガイド下に一つ一つのスペースを穿刺(針を刺すこと)し、ヒアルロン酸を抜き取りました。どうしても抜けない部分にはヒアルロン酸分解酵素を注入しました。

エコーは皮下脂肪の評価にも使えます。
脂肪吸引の適応や目的を判断する際、通常はその部分をつまんで厚みを確認します。
もちろんそれだけで十分という考え方もできますが、特に頬や顎下などは、つまんだ厚みのどこまでが皮下脂肪であるか判断に迷うことも少なくありません。
術前、かなり皮下脂肪がたくさん付いていると判断して手術に臨んだ場合にも、実際は思ったより脂肪が少なく結果もいまひとつなんてことがあります。
こういった時にも、エコーさえあれば、皮下脂肪の厚みをあらかじめ調べることができるので、手術後の結果のシミュレーションや適応の有無を術前にお伝えできます。




今回出ている画像には、皮下脂肪の厚みの具体的な数字は出ていませんが、これを0.1ミリ単位で計測することもできるので、治療前後の正確な評価にも使用できます。
最近はボトックスでエラやふくらはぎを細くする治療が流行っていますが、この治療の評価にもエコーが使えます。
筋肉は力を入れることで肥大しますが、ボトックスを注射した筋肉には力が入らなくなります。
この状態がしばらく続くと、筋肉自体が萎縮し、通常時の筋肉のサイズも小さくなります。
これがボトックスによる小顔治療の仕組みですが、事前にエコーでこの部分の筋肉の厚みを計測することで、適応を判断する参考になります。
また、ボトックスを注射した一ヶ月くらい後に再度計測することで、さらに正確に評価できます。

それ以外にも、以前に挿入されたシリコンや注入された異物をチェックすることもできますし、感染の有無や程度のチェックが出来ることもあります。
美容外科では、治療そのものが重視されがちですが、ほかの医療同様、診断も非常に大切であると思います。
より良い治療を行うために、より正確な診断が重要であるということです。
エコーはそれに大いに役立つ検査であると思います。
脂肪吸引やボトックスでの小顔治療を迷われている方、豊胸術をお考えの方や、以前受けた手術の結果が思わしくなく再手術をお考えの方、海外で注入した異物で悩まれている方など、ぜひご相談にいらしてください。
今回はいつもにも増してちょっと堅苦しいお話になってしまいました。
画像もエコーの写真ばかりで、単調になってしまいましたね。
ですから、ついでと言ってはなんですが、おまけのお話を一つ
先ほど話に出た頬の脂肪ですが、最近は脂肪吸引よりもずっと手軽な脂肪溶解注射という薬の治療が増えてきました。
この治療の欠点は、脂肪吸引のように一回で大きな変化が出るものではなく、何度か繰り返さなければいけないことや、繰り返し治療をしていっても、脂肪吸引レベルの効果が出にくいことでした。
しかし、最近の脂肪溶解注射は一回の治療で見た目に明らかな変化が出ることも少なくありません。
さらに、これを繰り返すことで脂肪吸引と同等の結果となる方もいらっしゃいます。

小鼻を小さくしたいとご相談にいらっしゃる方の中には、小鼻自体はそれほど大きくないというがかなりたくさんいらっしゃいます。
その中には、本当にきれいな形の小鼻なのに、ご自分で大きいと思い込んでいるだけの方もいます。
でも、実際それ以上に多いのは、大きくはないけど確かに目立つ、どこか気になる存在感のある小鼻を持った方です。
こういった方の多くは、「小鼻が大きいのではなく重い」という表現がしっくりくるタイプです。
「重い」というとあまりにも抽象的な表現ですが、実際、この表現以上にぴったりくる表現を思いつかないので、カウンセリングでもよくこう言って説明しています。
では、重い小鼻とは、具体的にどんな小鼻なのでしょうか。
イラストと写真で説明していきたいと思います。
横顔で、美しく見える鼻翼の形というのは、その下縁(鼻孔縁)の形状に大きな特徴があります。
鼻翼の下縁が、その付け根から一旦上に向かってゆるやかにカーブしていき、途中から方向を変え下に向かい、鼻先ではそのピークより下で終わっているように見えます。
ちょうど、鼻翼の付け根から飛行機が飛び立って、鼻先の手前で着地するイメージです。

これを、別の言い方で表現すると、鼻孔縁のカーブが全体として緩やかな上向きのカーブを描いていて、さらに、その鼻先側と付け根側に大きな高低差が無い形になります。

これが、小鼻が重く見える方になると、これとは違った形になっています。
まず、鼻孔縁が下に向かってカーブするか、またはほぼ直線的になっています。
鼻先側だけ、少し上向きのカーブになる方もいますが、全体として上向きの部分の割合が少ないのが特徴です。

こういった形に見える原因は、一つではありません。
小鼻そのものに原因がある場合もあれば、鼻の他の部分とのバランスに原因がある場合もあります。
このバランスにもいくつかのパーツか関係していますが、一番影響するのが鼻柱と鼻翼基部の位置関係です。
ちなみに鼻柱というのは鼻の左右の穴を隔てている真ん中の部分で、鼻翼基部というのは鼻翼の付け根になります。

この二つの位置関係で鼻翼の見え方が変わります。
例えば、鼻柱が短く鼻翼基部より上にあると、鼻翼が下に引っ張られたようになり、鼻翼が重く見えます。
鼻柱に充分な長さがあっても、それ以上に鼻翼基部の位置が低いと、同様に鼻翼が重く見えます。
バランスの問題ばかりではなく、鼻柱の長さや鼻翼基部の位置が理想的であっても、鼻翼自体に問題がある事で重く見えるケースもあります。
これは、鼻孔縁自体の形状が下向きのカーブになっているために鼻翼が重く見えるということです。
もちろん、こういった原因が複合的に合わさっているタイプも少なくありません。

当然、タイプが違えば治療の方針も異なります。
では、重い小鼻を軽くする治療についてお話していきたいと思います。
先ほどの3つのタイプに分けて、それぞれ考えてみたいと思います。
まず、鼻柱が短くて、鼻翼が重く見えるタイプでは、鼻柱を下に伸ばす治療、つまり「鼻中隔延長」を行います。
イメージとしては、飛び立ったまま着地しない飛行機を、着地させるイメージです。
この手術の詳細については、私の過去のブログやクリニックのホームページで見ていただくとして、簡単に言えば鼻の真ん中を下に引っ張るように伸ばす手術です。
実際、このタイプの方が指で鼻の真ん中をつまんで引っ張ると、それだけで、小鼻がすっきり見えます。(一度鏡の前で試してみてください。)
この鼻中隔延長は、前方にも鼻を伸ばすことができるので、重さだけでなく、小鼻が丸くふくらんで大きく見える方の、丸みの緩和を目指せます。
ですから、鼻柱が短いことも小鼻が大きいことも両方気になるという方は、よほど小鼻が大きい場合以外は、まず鼻中隔延長だけ行ってみることをお勧めしています。
それだけで、気になっていた小鼻の大きさが気にならなくなる方がたくさんいらっしゃいます。
もちろんそれでもまだ小鼻の大きさが気になれば、必要な分だけ切除すると良いと思います。

話が少し逸れてしまったので、元に戻ります。
次のタイプ、鼻柱の長さは充分あるけれど、それ以上に鼻翼が下がっているタイプには、「鼻翼挙上術」という治療を行います。
これは、その名の通り、鼻翼を上に移動させる手術です。単純に持ち上げるだけでは鼻翼が上でつかえてかっこ悪くなってしまうので、あらかじめ上げることでつかえる分の鼻翼を上で切除します。
通常の鼻翼縮小などと比べても傷が大きくなってしまうのが欠点ですが、この手術でなければきれいな小鼻にならない方は結構いらっしゃるので、最近増えつつある手術です。

では最後のタイプ、鼻柱や鼻翼基部の形は良いけれども、鼻孔縁のカーブそのものが下向きで小鼻が重く見える方には、鼻孔縁の下へのふくらみを変化させる「鼻孔縁形成術」を行います。
これも、以前お話ししたことがある治療なので、詳細は省きますが、小鼻の下縁を切除して形を変えるシンプルな治療です。
この手術は手技も単純で、傷も鼻孔縁の辺縁に沿った目立たない場所にしかできないので、適応さえあればぜひお勧めしたい治療です。

今回は、話を分かりやすくするため、ちょっと乱暴ですが大きく3つのタイプ分けをしてみましたが、実際はこれらの要因が複合的に関与していることが多々あります。
ですから、治療が複合的になることもかなりあります。
例えば、鼻柱も短いけれど、鼻孔縁のカーブ自体も下を向いているケースでは、鼻中隔延長と鼻孔縁形成の両方を同時に行います。
鼻翼の重さと大きさの両方に問題がある場合などでは、鼻翼挙上と鼻翼縮小を同時に行う場合もあります。
小鼻は本当に複雑で厄介な場所です。
一度手術すると戻れない治療も多いため、どんな治療をすればどういった形になるのかを術前に
イメージして治療に臨まないと、大変なことになります。
安易な治療は避け、納得いくまでしっかりとカウンセリングを受けて、手術に臨みましょう。
“ 理想の豊胸術ってどんなもの? パート3
前回、前々回とヒアルロン酸や脂肪注入による豊胸術についてお話してきましたが、今回はいよいよ人工乳腺(バック)による豊胸術についてお話していきたいと思います。
いよいよと言ったのは、少なくとも現在の豊胸術の主流の手術であることは間違いないからです。
最近は脂肪注入を希望される方も多いですが、それでも世界的に見れば、人工乳腺による豊胸が圧倒的なシェアを占めています。
人工乳腺についてはバックの種類(中身やシェルのタイプ、形状)、術式の違いとそれぞれの術式の適応など、お話しすることは山ほどありますが、まずはヒアルロン酸や脂肪注入と比較してどうかということに絞ってお話ししてみたいと思います。
前回までと同様、この手術のメリット、デメリットを確認することで、他の方法との違いを考えてみましょう。
ちなみに人工乳腺のことを、美容外科や形成外科では「バック」と言ったり「インプラント」と呼んだりしています。
この後の内容にも、この両方の表現が出てきますが、あくまで全て人工乳腺のことなのでご了承下さい。
ではまず、メリットです。
1.サイズアップ
もちろんどこまでも大きくできるわけではなく、元の体型やバストサイズによる限界もありますが、ほとんどの方で2サイズ以上のバストアップができます。
前回の脂肪注入の回でお話しさせていただきましたが、脂肪注入で一度に2サイズを超えるサイズアップは非常に難しく、大きなサイズアップを望まれる方は何度か手術を繰り返す必要があります。
ヒアルロン酸も、一度にたくさん入れ過ぎると、バスト以外の部位に広がってしまったりします。
ましてや、サイズを維持するためには繰り返し注入する必要があり、ヒアルロン酸で大きなサイズアップをすることは、金銭的にもかなりハードルが高くなります。
2.サイズの維持
ヒアルロン酸は1年前後で吸収されてしまいますし、脂肪も痩せてしまったりすると、サイズダウンしてしまいます。
それに比べ、人工乳腺であれば、入れたバックのボリュームがそのまま残ります。
以前よく使用されていた生理食塩水バックは、時間とともに水が抜けて小さくなってしまうことがありましたが、今のコヒーシブシリコンバックであればサイズが変わることはありません。
また、バックの耐久性には諸説ありますが、現代のシリコンバックであれば数十年の耐久性があると思います。
ちなみに、人工乳腺による乳房再建のガイドラインでは、「インプラントは半永久的なものではない」という記載があります。
またメーカーが再建患者さん用に作っているパンフレットにも「10~20年後の入れ替えを視野に入れておくことが望ましい」とされています。
ただしこれは、10年から20年後に必ず入れ替えなければいけないということではなく、あくまで入れ替えなければならなくなる可能性があるということです。
ですから「視野に入れて」なんていうあいまいな表現になっているのだと思います。
少なくとも、バックに異常がないかを定期的にチェックするべきではあると思いますが、検査で何も異常がなければ、あえて入れ替る必要はないと思います。
もし、すでにバックが入っている方で10年以上経過している方は、念のためエコーなどでバックの状態をチェックするのが望ましいと思います。
お近くの乳腺外科にご相談いただければ、美容目的で豊胸された方でも診察していただけるはずです。
もし、断られてしまったり、一般病院での検査に抵抗がある方は一度ご相談ください。
当院では、他のクリニックでご手術された方でも検査可能です。
3.乳がん検診に影響しない
これは、「逆じゃないの」と思われる方も多いと思いますが、注入するものの一部が乳腺内に入る可能性のあるヒアルロン酸や脂肪と比べ、人工乳腺は乳腺より下の層に入りますので、検査しにくくなることは原則ありません。
以前の生理食塩水バックであれば、マンモグラフィーでバストを挟み込むことによって、バックが破裂する可能性がありましたが、現代のコヒーシブシリコンバックであれば、外圧に対する耐久性は非常に高く、マンモグラフィー程度で損傷することはまずありません。
もちろん超音波検査なども全く問題なく行えます。
豊胸術を受けた方の中には、検査を断られるのを恐れて、もしくは、検査できないとあきらめて、乳がん検診を受けられない方がいらっしゃいますが、これほどばからしいことはありません。
最近は、コヒーシブシリコンバックによる乳房再建術が保険適応になったこともあり、しっかりした乳腺外科の施設であれば、人工乳腺を理由に乳がん検診を断られることはありません。
ただし、一般的な集団検診のレベルだと、人工乳腺が入っているというだけで、再検査とされてしまい、二度手間になる可能性があるので、最初から乳腺外科を受診されることをお勧めします。
では、デメリットはどうでしょうか。
1.傷ができる。
脂肪注入の場合でも、脂肪吸引のために小さな傷はできますが、バックを挿入する際は、数センチの切開をしなければなりません。
海外では、多くの場合乳房の下縁もしくは乳輪周囲を切開しますが、日本では脇を切開する術式が好まれます。
当たり前ですが、傷が目立たないというのがその理由です。
手術は多少面倒になるのですが、やはり傷の目立ち方を考えれば脇からアプローチするメリットは大きいと思います。
いまだに学会などで乳房下縁じゃないと出血などのリスクに対応できないから危ないとおっしゃる先生もいますが、丁寧な操作を行えば脇からのアプローチでも手術は行えます。
実際、この手術で術後に貧血をおこすような出血はまずありませんし、良い層を丁寧に剥離していけばほとんど出血しません。
話はそれてしまいましたが、いずれにせよ傷ができるのはこの手術のデメリットの一つであると思います。
ただし、ほとんどの場合、脇の傷は元々あるしわの一部のようになってしまいますし、もし術後の経過で思いのほか目立つ傷になってしまった場合も、修正することで目立たなくできます。
2.異物感を感じる
人工乳腺は簡単に言えば袋にシリコンを詰めたものです。
袋状のものなので、バストを触ったり動かした際に一つの塊としてしか動きません。ましてや中身は均一な素材です。
実際の乳房は、脂肪や乳腺の集合体で、決して均一ではありません。
それに比べ人工乳腺は均一な塊なので、それが異物感につながることがあります。
また、稀ではありますが、人工乳腺が時々冷たく感じるとおっしゃられる方がいます。
これはおそらくですが、人工乳腺の中には血流が無いので、運動などで急激な体温の上昇がある際に、バックの温度が周囲に比べて一時的に低くなるためと考えられます。
こういったことも異物感を感じる要因になると思います。
3.触ると分かる
先ほども述べたように、人工乳腺は袋に入ったシリコンの塊で、中には神経も血管も通っていないので、当然自分で触ればそこにあるのがわかります。
では、他人が触ったらどうでしょうか?
これは、単純にこうと言えるものではありません。
たとえば、こういった手術を仕事としている我々が触診すれば、おそらくどんなに仕上がりがいい人工乳腺でも入っていることはわかります。
では、それ以外の方ではどうでしょうか?
これは、手術の仕上がりで大きく異なります。
この仕上がりには、もちろん手術の出来不出来が大きく作用しますが、それ以外にも、手術を受けた方の体型や元のバストの大きさ、皮下脂肪の厚み、バックのサイズなど様々な要素が影響します。
例えば、皮下脂肪が厚く、乳腺組織もある程度ある方は、ちょっと触っただけでは我々でも迷うくらい、自然な感触になることが多いのですが、逆に、痩せていてバストの上に肋骨が浮き出ているような方であれば、どうしてもバックをダイレクトに触れるので、わかりやすくなります。
4.見た目や動きが本物と異なる
これも、すべての方がそうなるというわけではなく、特に痩せていて皮下脂肪や乳腺組織が少ない方が、体形に合わない大きなバックを入れたケースほど、本物との違いが鮮明に出てしまいます。
特に極端に痩せている方は、バックの辺縁が浮き出やすく、いかにも「入っている」感じが強くなります。
最近はこういった方には、バック挿入後にバックの周囲に脂肪やヒアルロン酸を注入することで、辺縁を目立ちにくくさせる工夫をしたりもしています。
こういった治療は、最初から脂肪やヒアルロンだけでバストアップするのに比べ、サイズアップが容易ということもあり、少しずつ増えてきています。
動きや感触も、実際のバストとは多少異なります。
先ほども述べた通り、人工乳腺は本物のバストと違い、均一なシリコンが入った袋状の物体です。
これが多少本物のバストと異なる動きに影響します。
具体的には、仰向けになったとき、本物のバストではバスト自体がぺしゃんとつぶれるような形になりながら、同時に外に流れます。
人工乳腺でも術後、皮膚にある程度の余裕が出来てくると、外に流れるような動きは出てきますが、本物のようなつぶれる変化にはなりません。
あくまで上方向のボリュームをキープしながら動きます。
本物のバストでも若くて脂肪の少ない乳腺主体のバストであれば、あまりつぶれるような動きにはならないので、それほど大きな差には感じないかもしれませんが、脂肪の多い柔らかいバストと比べるとかなり違うと思います。
最近、日本で使用頻度が急激に増加しているモティーバという人工乳腺は、従来のコヒーシブシリコンに比べ、バックのシェルの伸縮性が高く、中身のシリコンも柔らかいので、重力によって形が変化しやすくできています。
ですから、従来のものに比べるとかなり自然な動きに近づいてきていると思います。
実際このバックはコヒーシブシリコンバックに多く見られるアナトミカル型(涙型)ではなく、ラウンド型(お椀型)をしていますが、起き上がると重力の影響で下方向にバックのボリュームが偏り、「アナトミカル型に近い形状」になります。
こういったバックがさらに改良されると、もしかしたらさらに本物に近いバストが作れるようになるかもしれませんね。