Pickupコンテンツ - 田中宏典
AGA(男性型脱毛症)の話~病態編
ネットで検索すると様々なAGAのサイトであったり、クリニックのホームページ等で解説されているので既にご存知の方も多いかもしれません。
しかしながら、治療にも関わってくる部分なので、AGAの病態についてここでもお話ししておきたいと思います。
AGA(男性型脱毛症)の病態
AGAは成人男性の前頭部や頭頂部の毛髪が、あるパターンで薄毛になるというもので、早い人では20歳頃から発症します。30歳代では約10%、40歳代では約30%の発症率という統計結果が出ています。
紀元前の時代から人類は抜け毛で悩んでいたことが記録に残っておりますが、そのメカニズムが解明されるまでには長い月日がかかりました。
初めにAGAに男性ホルモンと遺伝が関与していると実証したのはアメリカの医師Hamiltonであり、約70年前の出来事です。
男性ホルモンが作用する部位とは
男性ホルモンが作用すると男子では髭や胸毛、男子女子ともに脇毛や陰毛といった体毛が硬毛化します。

ですが、男性ホルモンが作用する毛包の部位は限られています。作用できる受容体があるのは、
- 髭
- 脇毛
- 前頭部
- 頭頂部の間葉系の毛乳頭細胞
です。上皮系の毛母細胞には受容体はありません。また、後頭部の毛乳頭細胞には作用できる受容体はありません。
このことからAGAでも後頭部毛髪は保持されるというのは理解できます。

テストステロン(男性ホルモン)が血液中から細胞内に入ると、5α-還元酵素という酵素により、ジヒドロテストステロン(DHT)に変化します。
このDHTが男性ホルモン受容体と結合し、細胞の核内で標的遺伝子のプロモーターと結合し、タンパク質誘導をすると生物学的な作用が起こります。
5α-還元酵素を阻害する

5α-還元酵素にはタイプⅠとタイプⅡという種類があります。それぞれのタイプの存在部位は図のようになっています。
この5α-還元酵素の特異的阻害薬がフィナステリドやデュタステリドです。
- フィナステリド(商品名:プロペシア、プロスカー)
≫ タイプⅡを阻害 - デュタステリド(商品名アボルブ、アボダート)
≫ タイプⅠ・Ⅱともに阻害
これらの脱毛予防はこの機序によるものです。
効く理由があるということですね。