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埋没糸抜去は宝探し?

名古屋院 李 院長 プロフィールはこちら

「10分で終わる事もあるのに、2時間かけても終わらない事がある手術」

これ何だか分りますか?

答えは「埋没糸抜去術」です。

「埋没糸」というのは、「埋没法」と呼ばれる二重の手術で瞼に埋め込んだ糸です。

まず、埋没法とは?

二重埋没法とは

これを読んでいる方のほとんどは「埋没法」という手術を御存知かと思いますが、あえて説明すると、「瞼を切開せずに、皮膚の中に糸を数本埋め込むことで、二重を作る術式」で、一般的には、この糸で皮膚と瞼板か筋肉をつなげる事で開眼時に二重が出来るようになっています。

傷もほとんど残らず、切開して二重を作る手術に比べると、手術時間も短く術後の脹れも少ない術式です。

もちろん、切開手術に比べ戻り易いとか、たるみや瞼の状態によっては、作れるラインに多少の限界があるといった欠点もありますが、適応さえ間違わなければ非常にメリットの多い術式であると思います。

次に、埋没糸抜去とは?

話しを元に戻します。埋没法では、皮膚と瞼板もしくは挙筋の間にループ状に糸をかけ、最後に皮膚側で糸を結び、その結び目を皮下に埋め込みます。

この埋没法で埋め込んだ糸を捜し出して、それを取り除く手術がこの「埋没糸抜去」です。

抜去の際はこの結び目を捜すことで、ループ状に架かった糸すべてを抜くことが出来ます。一番オーソドックスな方法は、埋没糸を入れた時と同様に、結び目があると思われる位置に1ミリ程度の小さい穴を開け、ここから糸を捜索します。

どうしても見つからない場合は数ミリの小切開を加える場合もありますが(切りたくない方には行いません)、可能な限りこの小さな穴から糸を探します。結び目ではなく、糸の途中が見つかっただけでは、ここから引っ張って全体を抜こうにも結び目が引っ掛かってしまい、糸全部を抜く事はできません。無理に引っ張ると、途中で糸が切れてしまう可能性もあるので、あくまで結び目を捜し出す事が最優先となります。

二重埋没糸抜去とは

この際、結び目が瞼のどの深さにあるのかで、手術の難易度が全く変わります。

結び目の存在する位置は、浅い方から順に、皮内、皮下、筋肉内、瞼板前となります。

たまに、糸の一部が露出した状態でご相談に来られる方もらっしゃいますが、これは当然容易に抜去することができます。

皮内に結び目が存在する方や、皮下でも皮膚自体が薄い方であれば、埋没糸が透けて見えますので、簡単に抜去出来ます。

皮下でもやや皮膚が厚く、糸が表側から見えない方や、筋肉内に入っている方になってくると、糸を捜しだすのが困難になってきます。

さらに深い層、つまり瞼板直上に結び目がある方の糸を捜し出すのは、本当に困難を極めます。

特に手術から時間が経った糸は経年変化で色が抜けて半透明になっているので、糸を捜し出すのに本当に苦労します。

ただし、通常であればこんな深い層に結び目が入り込んでしまう事はありません。少なくとも当院で埋没法をした方であれば、多分考えられません。

では、どういった場合に深い層に結び目が入り込んでしまうのでしょうか?

二重埋没法の力加減

この理由はいくつか考えられますが、大きな原因は手術の際に強く糸を縛りすぎてしまう事であると思います。強く縛ったからと言って、瞼板前のような深い所まで結び目がいきなり入り込むことはありません。ただし、絶えず強い力で引っ張られることによって、徐々に結び目が深い層に潜り込んでいきます。

特に挙筋法(皮膚側と挙筋を糸でつなぐ)の場合より瞼板法(皮膚側と瞼板を糸でつなぐ)で強く結んだ場合の方が、軟らかい皮膚側にあった結び目がそれより硬い瞼板側に寄っていくため、いっそう深い層まで引き込まれていきます。さらに、糸を大きなループ状でなく、縦に小さなループで結ぶと、より深い所入り易くなります。

埋没法の糸は、あくまで開眼に伴う挙筋や瞼板の動きに引っ張られて、皮膚を引き込むのであって、目を閉じた時に、皮膚と瞼板や挙筋を強く引きよせておく必要はありません。ですから、糸には適度な遊び(緩み)があるのが理想的です。ただしあまり緩すぎると皮膚側に力が伝わらないので、「強すぎず、緩すぎず」というのがポイントです。

埋没法は、シンプルで技術的に大きな差の出る治療ではありませんが、差が出るとすれば、この糸の結ぶ強さの適度なさじ加減であると思います。以前、某大手美容クリニックで研修を受けたという先生と埋没法の話しをした際、そのクリニックでは、出来るだけ強く糸を結ぶように指導を受けたとおっしゃっていました。埋没法の経験がまだ少ないドクターがこの手術を行う場合、微妙なさじ加減ができず、中途半端に緩んですぐに二重が消えてしまうより、強く結んで二重を作った方が良いという考えのもとでの指導ではないかと思います(あくまで私の想像です。)。

ただし、この強く結ぶ弊害は、埋没糸抜去が難しくなる事ばかりではありません。本来、埋没法は、切開法に比べると段違いにダウンタイムの短い手術で、軽いむくみ程度の脹れが数日続く程度です。でも、過去に埋没法をされた方の中に、1か月以上脹れたとか、数カ月たっても強く引っ張られているような異和感が残っているという方がいらっしゃいます。この原因も先ほどお話しした、強く糸を結ぶ事にあると考えています。強く結ばれた糸で組織が締め付けられることで、うっ血したり、瞼板がたわみ変形することがあるからです。

埋没法を受けた後に、あまりにも脹れが長引いている方や、瞼の奥の異和感が強い方は、糸が深く沈みこんでしまう前に、一旦今入っている糸を抜去されて、あらためて適度なさじ加減の埋没法を受けられた方が良いかもしれません。

つまり、埋没糸抜去とは?

長々とお話をしてきましたが、そんな訳で、「埋没糸抜去」という手術は、その状態によって全く難易度が異なり、それに要する時間も違ってきます。最初にお話ししたように、10分程度で終わる事もあれば、すべてのの糸を見つけ出すのに2時間かかる事もありますし、どんなに時間をかけても見つからない事もあります。

そういう意味では、手術の予定の立てにくい時間の読めない厄介な治療です。当院に「埋没糸抜去」を受けにいらっしゃる方の中に、「他のクリニックに相談に行ったが、断られてしまった。」という方は少なくありません。中には、元々手術を受けたクリニックに相談に行かれたのに、「一度入れた糸は抜くのが難しい。」とか、「抜く時に組織を傷める可能性があるから、このままにした方が良い。」と体よく断られたという方もいらっしゃいます。

これは、手術時間が読めない治療であるだけに、特に時間がかかった場合、その日の予約の運行に支障をきたす可能性があることや、運営上、効率が悪いことなどの事情がその根底にあるのだと思います(すべてとは言いませんが)

ちなみに、私自身はどうかと言えば、この「埋没糸抜去」という手術が嫌いではありません。というよりむしろ、好きな治療のひとつです。「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、その言葉通り得意な手術と言ってもいいと思います。

一見、この手術は糸を探し出すという単純作業で、美容外科らしい創造性に欠けるつまらない手術に思えますし、得意と自慢する程の複雑な施術にも見えません。でも、意外と奥が深い面もあります。特に、外からでは全く見えない糸を探し出す場合などは、ただやみくもに探すのではなく、糸を入れる時にできた皮膚側や裏側の瞼板の僅かな傷や、瞼板のたわみ、皮膚や眼輪筋を引っ張った時の緊張など、ほんの僅かな手がかりから糸のある位置を予測し、根気良く探していくことで、かなりの確率で糸を見つけだすことが出来ます。

その行為は、まるで事件の捜査をする探偵のようで、苦労して見つけた時はちょっとした感動があります。ちょっと不謹慎な言い方かもしれませんが、「宝探し」に似た楽しさもあります。それに、この埋没糸を抜きたいという方の中には、かなり悩まれていらっしゃる方が少なくないので(他でできないと言われた方は特に)、抜くことでその悩みがクリアになり、明るい顔でお帰りになる姿を見ると、とてもやりがいを感じます。

何らかの理由で埋没糸を抜かれたいと考えている方、他のクリニックに行ったが断られてしまった方、手術は受けたが抜けなかったという方、是非一度ご相談にいらしてください。