第50回日本形成外科学会総会、東京 2007/04/11-13

▶ 隆鼻術におけるglabella augmentationの役割

目的:

隆鼻術の目的は鼻背を高くして鼻筋を通すことであるが、nasionの位置は頭側に移動する。そのため、nasionの位置が低い症例では、鼻筋が頭側に伸びて短鼻が修正される。

しかし、nasionの位置が正常か、高い症例では鼻が長くなりすぎる。これに対し、glabella augmentationでは、nasionを尾側に移動することがある。われわれが行っているglabella augmentationの術式と症例結果を報告する。

方法:

glabella augmentationはヒアルロン酸注入による方法が簡便である。今回は人工物の挿入による方法を主に紹介する。挿入は鼻腔内切開で可能であるが、鼻中隔延長術を併用する時にはopen rhinoplastyで行う。

使用する挿入物は厚さ2㎜のPTFEを重ねたものをトリミングして作成する。プロテーゼの形は下縁が鼻背の幅に相当し、上縁はそれより太くする。上縁の幅は、患者の希望に合わせ、狭いものでは眉間中央1.5㎝、広いものでは眼窩上縁に及ぶように4㎝にする。

プロテーゼに通した糸を眉間の皮膚から出して、丸めて挿入したプロテーゼをポケット内で広げるのに用いる。術後はサーモスプリントを1週間あてる。

結果:

隆鼻術の既往のある症例にはglabella augmentationを単独で行った。その他では、隆鼻術とglabella augmentationを併用した。

glabella augmentationの結果、正面では眉間から鼻先まで、鼻筋が通った。側面では、nasionの位置が瞳孔から開瞼時の上眼瞼縁の高さにとどまり、鼻が上方に長くなりすぎるのを避けることができた。

考察:

隆鼻術を希望する症例に対しては、眉間の突出と鼻根部の陥凹とnasionの高さを考慮して、glabella augmentationの適応を検討する必要がある。

第6回アジア太平洋美容外科アカデミー、フィリピン マニラ 2007/03/02-04

The role of glabella augmentation for Oriental rhinoplasty

Keizo Fukuta, M.D.
Haruo Oguchi, M.D.
Yuji Nakanishi, M.D.
Verite Clinic

The most common demand in rhinoplasty for Orientals is augmentation of the dorsum. Insertion of a silicone implant has been widely used for this purpose.

The dorsal augmentation increases the height of the dorsal line, and it shifts the nasion to more cephalic position at the same time. This means the dorsal augmentation alone can make the nose look longer.

The dorsal augmentation provides impression of nose being too long for those who have low dorsum with the nasion in an adequate or cephalic position. In contrast, the augmentation of the glabella can shift the nasion caudally.

This paper presents our experience of the combined use of glabella augmentation with dorsal augmentation of the nose. A simple method for the glabella augmentation is injection of hyaluronic acid.

Although the result is temporary, it is a very intuitive technique. For those who seek for a permanent result, we have used a PTFE implant, which is inserted via endonasal approach or open rhinoplasty approach.

第29回日本美容外科学会、横浜 2006/10/8-9


鼻中隔延長術

目的:
短鼻やcolumella retrusionや鼻尖のprojectionが不十分なのは大鼻翼軟骨を支持する鼻中隔軟骨の低形成が原因であるとわれわれは考え、鼻尖を下方や前方へ伸ばすのに鼻中隔を延長する手術を行っている。
鼻中隔を延長する材料として鼻中隔軟骨・耳介軟骨・肋軟骨が選択できる。今回の発表では肋軟骨を用いた鼻中隔延長術の手術手技を供覧する。

方法:
第7肋軟骨を採取し、正中面に沿って2分割して約1mmの板状軟骨片を2枚作成する。鼻柱中央にW切開を用いたopen rhinoplastyで大鼻翼軟骨と鼻中隔軟骨を展開する。
2枚の肋軟骨片が鼻中隔軟骨と10mm以上オーバーラップするように鼻中隔軟骨を挟んで固定し、鼻中隔を前下方へ延長する。継ぎ足した軟骨の下縁に大鼻翼軟骨の中間脚と内側脚を縫合する。

結果:
63例に肋軟骨を用いた鼻中隔延長術を施行した。延長できる量は軟部組織、特に粘膜の伸展性によって決定された。術後は鼻尖を左右に動かすことはできるが、上下への可動性は全例でなくなった。
その他に、斜鼻変形、高すぎる鼻尖、長すぎる鼻、鼻尖の角張り、太い鼻柱といった問題が見られた。これらは延長方向の正しい選択や耳介軟骨をonlay graftに用いることや、大鼻翼軟骨の間に挟まれる軟骨片を薄くするといった手技の改良によって対処できるようになった。

考察:
鼻中隔軟骨や耳介軟骨を用いた症例では、採取できた軟骨片の大きさが足りなかったり、軟らかく過ぎたりして、十分な延長を得られないことがあった。これに対し、肋軟骨では十分な強度と大きさを得ることができ、軟部組織が伸びる限り、鼻尖を伸ばすことができた。